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「Jazz Brat」第6号掲載分(2004年4月)Disc Review 「Jazz Brat」(2002年3月創刊のミニコミ誌)の第6号から拙著のディスク・レヴューを引っ張り出した。 第6号では、新たな連載「東欧~スラヴのサックス奏者探訪」を、ウラジーミル・チェカシン(Vladimir Chekasin)で出発させた。結構力を入れて書いた。 セルゲイ・レートフ(Sergey Letov)氏にも定期的に執筆をお願いして快諾を得られ、早速「ソヴィエト・ロシアにおける新即興音楽小史」をいただき、嬉しかった。この関連のまとまった記事はまだあまり世に出ていなかったので非常にためになった。 鈴木正美の新連載も開始した。題して、「極北の音を航海した男 ーレジツキイの思い出ー」第1回である。鈴木氏が敬愛してやまない、アルハンゲリスクのウラジーミル・レジツキイに関する真摯な論考である。 さらに、なんとなんと、当時知己を得た赤塚若樹氏から一筆、「イヴァ・ビトヴァー近況」を頂戴した。 さらにさらに、ルーマニア出身のサックス奏者ニコラス・シミオン(Nicolas Simion」と出会い、書簡形式のインタヴューが実現した。大変多くのことを教えていただいた。 こんな具合だったから36ページ建てとなって、コピー印刷・製本に手を焼いていた折、音楽ジャーナリスト・オーガナイザー・プロデューサーとして活躍されてきたモスクワのニコライ・ドミートリエフ(Nikolai Dmitriev)氏が4月10日急逝された。ドミートリエフ氏は1955年生まれ。日本とロシアをつなぐ信頼あふれるキーパーソンだった。レジツキイ、タラソフ、ミラーによるウラジーミル・トリオ、ヴャチェスラフ・ガイヴォロンスキーの日本ツアー他に同行し、3度来日された。近年はCDレーベル「Long Arms」やライヴハイス「ドム」のプロデューサーとして精力的だった。私は1992年秋、副島輝人氏、鈴木正美氏のお導きでモスクワ~アルハンゲリスク~ソロフキーを巡った時にニコライ・ドミートリエフ氏と出会い、インタヴューさせていただいた。 今の自分がしていることに直結する、決定的な方々が揃った号です。 お世話になった皆様に心から感謝している次第です。 ![]() ●東欧~スラヴのサックス奏者探訪 新連載第1回:評伝 ウラジーミル・チェカシン[岡島豊樹]Vladimir Chekasin : biography & discography........by Toyoki Okajima ●ソヴィエト/ロシアにおける新即興音楽小史[セルゲイ・レートフ]Brief history of New Improvised Music in Soviet/Russia...by Sergey Letov ●新連載 極北の音を航海した男-レジツキイの思い出-第1回 [鈴木正美]A guy who navigated through the sound in the far-northern land : new series 1…by Masami Suzuki ●イヴァ・ビトヴァー近況[赤塚若樹] Recent Iva Bittova...by Wakagi Akatsuka ●ニコラス・シミオン(ルーマニア)・インタヴュー[岡島豊樹]Interview with Nicolas Simion from Romania ●Disc Review [岡島豊樹]by Toyoki Okajima:Jazz, folk & other music:レシェク・モジュジェル/トマシュ・スタンコ/ヴァレンチーナ・ポノマリョーワ&ユーリ・クズネツォフ/セルゲイ・クリョーヒン=ウラジーミル・ヴォルコフ=ケシャヴァン・マスラク/アレクセイ・アイギ/アンサンブル3分44秒/ファンファーレ・チオカリーア/コソヴォ・ジプシー/他 【Disc Review】(2004) ![]() Leszek Mozdzer『Solo in Ukraine』(Gowi CDG 59)CD, Poland/Jazz, 2003年発売 ●personnel:Leszek Mozdzer (piano) solo, recorded live in Ukraina , 2000 & 2001 ●tracks:1. Mazurek OP. 33 Nr2 2. Wyzwnia, Etrologi 3. Mazurek OP33 Nr2 4. Bioli 5. No Message 6. Mazurek OP. 24 Nr1 7. My Secret Love/Preludium 26 8. Maiden Voyage 9. Mazurek OP. 17 Nr14 ポーランドの若手ピアニスト3傑の1人と私考えておりますレシェク・モジュジェルのソロ・ピアノによるライヴ盤。ショパンのマズルカのジャズ的解釈5曲、ハービー・ハンコックの「処女航海」、そしてオリジナル。どこから聴いても、キラキラ輝きながらメロディアスなフレーズが溢れ出てきます。2ではピアノ弦に何か置いてのいわゆるプリペアードですが、実験臭皆無のところが逸材の証明。超絶技巧と冒険心をどんどんアピールしながらも、楽しい驚きとして受け取らせてしまうのがモジュジェルの良いところ! ![]() ●personnel:Leszek Mozdzer (piano) , Adam Pieronczyk (tenor sax, soprano sax, etc), recorded live in Ukraina, 1999 ●tracks:1. Song of the Sunkentown 2. Biali 3. Level 700 4. Tell me anything about your life, Mr. Buck 5. For Walter こちらはレシェク・モジュジェルがポーランドの若手テナー屈指の1人アダム・ピエロンチクとデュオで演じたライヴ盤。ソロ盤もこれもウクライナでの演奏。何の打ち合わせもなくステージに上がったそうですが、ほんとうなの? ほんとうみたいで、すごい集中力! 特にモジュジェルの呼応の仕方は繊細の極致というやつです。モジュジェルの珠玉のリリカル・アルペジオで始まり、やがて2人が夢幻的なヴィジョンを描く2(約15分)にとりわけ感激しました。1曲の演奏はどれも長いですけど、それ相応の変化があり、名場面の連続。 ![]() Tomasz Stanko Quartet『Suspended Night』(ECM 1869)CD, Poland/Jazz, 2004年発売 ●personnel:Tomasz Stanko (trumpet), Marcin Wasilewski (piano), Slawomir Kurkiewicz (bass), Michal Miskiewicz (drums), recorded in 2003 ●tracks:1. Song for Sarah 2-11. Suspended Variations I~X トマシュ・スタンコはポーランド・ジャズ界のスーパースターと断言して良いでしょう。その最新作は、前作と同様、“Simple Acoustivc Trio”の3人を丸ごと含んだレギュラーグループによる演奏です。バラード曲が多いです。ロング・トーンの多い中に、微細な揺らぎやハスキー・トーン等によって絶妙のニュアンスを醸し出すスタンコ。結構なお年のはずなのに、文字通り健在。どの曲も抒情的な旋律を持っており、全体的に前作よりだいぶとっつきやすいです。マルチン・ヴァシレフスキ(ピアノ)も持ち味発揮。 ![]() V.A.『Jazz Impressions of St.Petersburg』(Memo Music MM 6134) CD, Russia/Jazz, 2002年発売 ●personnel:Anakonda Project: Igor Timofeev (tenor sax), Pavel Chekmakovsky (guitar), Andrei Kondakov (keyboards), Sergey Ananiev (keyboards, drums, proguramming) / Soft Emotions: Andrei Kndakov (piano), Dmitry Kolesnik (bass), Alexandre Mashin(drums) / Intrjazz Quartet: Oliver Ker-Ourio (harmonica), Christian Scheube r(drums), Dmitry Overchenkov (bass), Andrei Kondakov (el-piano)/ & other groups ●tracks:1. Broadway At Night 2. Estate 3. Ca c'est bon 4. Blues 5.Do Nothing Till You hear From Me 6. Thank you Thank you 7. Children's song 8. The Openess of two in three 9. Second African 10. Daylight Photograph 11. Autumn, etc. (all 14 tracks) サンクトペテルブルクを地盤として活躍しているロシア(系)ジャズ・グループの演奏を集めたオムニバス。名ピアニストのアンドレイ・コンダコフが絡んだグループが多いです。イーゴリ・ティモフェエフ、アンドレイ・グレエフといった筋の良い万能型サックス奏者も顔を出しています。親しみやすいメロディの曲が大半です。コンダコフらのリリカル・トリオの3がその極み。しかし、コンダコフ、アルカージィ・シルクロペル、ウラジーミル・ヴォルコフのグループによる8、ヴォルコフのトリオによる9は他と明らかに異なる曲趣です。 ![]() Valentina Ponomareva & Yuri Kuznetzov『Avant-garde Romance』(Boheme CDBMR 303270)CD, Russia-Ukraina/Jazz +α, 2003年発売 ●personnel:Valentina Ponomareva (vocal), Yuri Kuznetzov (piano), recrded live 美貌の天才歌手として華麗な活躍を繰り広げてきたロシア・ジプシー歌手の最高峰、ヴァレンチナ・ポノマリョーワの最新アルバム。オデッサを地盤とするピアニストのユーリイ・クズネツォフの伴奏によるデュオ・ステージを収録。「アヴァンギャルド・ロマンス」とは巧く表したものです。ポノマリョーワはジプシー民謡・歌謡にとどらまらず、ポップス、ジャズ、前衛音楽でも輝かしい足跡を残してきました。幼女から老婆まで、恋する乙女も淑女もあばずれも、声で多彩に演じわけることのできる人です。そして、大好きな即興ヴォーカルでそれをやったときの驚きを、皆さんにもぜひ経験して欲しいです。ユーリイはロマンティック・ピアノの名人として定評がある人。スティーヴン・キングもここまで思いつくかあやしいくらい、幻想と悪夢が万華鏡のように入れ代わる唯一無二のショウ! ![]() Vladimir Volkov, Sergey Kuryokhin, Keshavan Maslak『Jet Lag』(Solyd SLR 0298) CD, Russia-USA/Jazz, 2003年発売 ●personnel:Vladimir Volkov (bass), Sergey Kuryokhin (piao, keyboards, voice), Keshavan Maslak (saxes, guitar, voice), recorded 1996* & 1997 ●tracks:1. Drem number 1 (Volkov out)* 2. Maslak's dream (Maslak out)* 3. Duet (Kuryokhin out) 4. A dream for two (Volkov out)* 5. Double bass double (Kuryokhin & Maslak out) 6. Jet Lag* 7. I see (Kuryokhin out) 8. I remember your shoes (for Sergey) (Kryokihin out) 9. Dream number 4 (Volkov&Maslak out)* ロシアのピアニスト・作曲家セルゲイ・クリョーヒンのファンの皆様、お待ちどうさま。これは、既発・初登場音源を合わせた8タイトルのシリーズによって、彼が天才・鬼才・異才と派手な称号の数々を寄せられている理由を明確に証明してくれたソリド社による、クリョーヒンの最晩年の演奏を入れたCDです。ソ連時代から卓抜な音楽を連発して淀むことのなかったクリョーヒンは、残念ながら1996年に42歳で、進行中の計画をいくつも抱えたまま息を引き取りました。その前年の秋、「即興演奏からノイズまで究極・最高の音楽のためだけの、究極のノン・コマーシャルなレーベルを作りたいんだ。レーベル名はヴェルディのオペラからとって『トラヴィアータ』にして、ロゴマークには絶世の美女をあしらうんだ」と祝福をおねだりするような茶目っ気たっぷりの仕種で青写真を披露してくれた姿が忘れられない。「第1弾は僕とケシャヴァン・マスラクのデュオの予定だ。今年一緒にツアーして良い感じだったし、来年1月にケシャヴァンの住んでいるフロリダで音をまとめて、またあちこち回って日本にもまた来るよ」。しかしトラヴィアータも美女ロゴも幻となった。ケシャヴァンとのデュオの録音は翌96年に世に出たものの、クリョーヒンはすでにこの世の人ではなかった。 ケシャヴァンはUSA生まれのサックス奏者で、熱情ほとばしる吹奏が醍醐味というイメージが一般的には先行していますが、ときにダダ的な所作や詩の朗読も交えます。ポリスタイルの演奏を特徴とするクリョーヒンにとってそうした多面性こそ歓迎すべきキャラクターでした。95年に2人が日本で披露した歌あり、詩朗読もありでジャズ、ノイズ、パフォーマンス含みのステージの珍無類なことときたら衝撃的でした。このCDの中のデュオによるトラック(1、4、6)からあの夜の演奏を偲ばずに入られません。聴いた後には、得難い才能が消滅した喪失感に打ちのめされることも避けられない。 トラヴィアータの青写真に含まれていた他の企画には、かつて映画/演劇用に作った音楽のアップデートを画策したオペラ・プロジェクトがあります。死後Long Armsから出た『ジャスト・オペラ』はセルゲイ本人の残したプロットに即して、友人であり共演者だったガイヴォロンスキーが仕上げたものです。そこに入っていた1曲「最後のワルツ」のアップデイト用スケッチが、この『ジェット・ラグ』の9曲目でしょう。かすかに聴こえる裏声はクリョーヒン自身のものでしょう。 クリョーヒンが企画・プロデュースを務めたヴャチェスラフ・ガイヴォロンスキーのトランペット・ソロ・アルバムはLong Armsから『フォー・セルゲイ』として死後にリリースされています。そのガイヴォロンスキーと組んだ「レニングラード・デュオ」によってソ連時代から名高いコントラバスの名手が、ウラジーミル・ヴォルコフです。クリョーヒンとも長年の音楽仲間でした。ここで聴けるクリョーヒンとのデュオ・トラック(2曲目)は、水もしたたるロマンスや、テレパシー的なまでの合致や、幼児的な移り気などが去来し、優美かつトラヴィアータな香りもする即興演奏です。このヴォルコフの絡んだものもトラヴィアータの企画に入っていたのかもしれないと考えています。 なお、3、7、8曲目はクリョーヒン没後の97年に行われた追悼追悼ライヴから選ばれた演奏です。 ![]() Mihaly Dresch『Quiet as it is』(BMC CD 035)CD, Hungary/Jazz with folk, 2001年発売 ●personnel:Mihaly Dresch (tenor & soprano sax, flute, vocal), Ferenc Kovac (violin, trumpet), Balasz Unger (cimbalom), Matyas Szandal (bass), Istvan Balo (drums) ●tracks:1. Seesaw 2. Put it out! 3. "Gyimes" impression 4. The river Tisza 5. The Great Plain... sorrowful 7. Sorrow, sorrow 「ハンガリーのフォーク音楽とジャズを結び付けて成果を上げた功労者」ということで評価絶大のミハーイ・ドレシュの比較的新しいアルバム。自国の著名な振付師の作品に用いられた曲集とのことです。かつて独特のリズムに誘われてふわりと宙に浮いたような気分になった「Put it out!」に味をしめて、この人のアルバムを随分集めました。その曲をこのCDで別編成で聴けただけでも上機嫌。舞踊に使われたという情報に納得です。ドレシュについては日本盤『Zeng A Lelek』(ビーンズ BNSCD-870 )の拙著ライナーノーツをぜひご参照ください。 ![]() Alexei Aigui & Dietmar Bonnen『Black Water』(Solyd SLR 03555)CD, Russia-Germany/Avant-pop, 2003年発売 ●personnel:Alexei Aigui (violin), Dietmar Bonnen(piano), Denis Kalinsky (cello on 4 & 8) recorded in 2002 ●tracks:1. How could I be such a fool 2. Let's make the water turn black 3. Sofa 4. The idiot bastard son 5. Oh no 6. Black napkins 7. Mom & dad 8. The Sheik yerbouti tango 高名な詩人ゲンナジィ・アイギを父にもつロシアの音楽家アレクセイ・アイギ(ヴァイオリン)がフランク・ザッパの曲をカヴァー。形はピアノ伴奏によるヴァイオリン・ソナタ風、演奏はザッパの主題に基づく変奏曲といった風情で、正調クラシック風の弾き方から、突然変容したり戻ったり。ジャズ的変奏も意識されていると思われる。前衛、ポップ、フォーク、クラシックなど雑食的に取り込みながら、けっこうトレンディでアクセサブルなサウンドをクリエイトしてきたアイギとしては、一度は手がけたかったその道の大先輩の音楽だろう。 ![]() Ensemble 4'33"『Mix』(Solyd 0354), Russia/Avant-pop, 2003年発売 ●personnel:Alexei Aigui (violin, electronics, Glockespiel), Dnis Kalinsky (cello), Andrei Gocharov (trumpet, flugellhorn), Erkin Yussupov (trombone), Sergey Nikolsky (bass), Andrei Romanika (drums), Arkady Marto (synthesizer, piano, kalimba), Mikhail Spassky (keyboard), Mina Agossi (vocal)s & others, recorded in 2002-2003 ●tracks:1. Why don't you right 2. Petit matin 3. Marakaraka 4. Les Robots favoris de Louis XIV 5. Finistere 6. Nexango 7. Goutte de miel 8. Why me? 9.Post “4分33秒”という名のグループを率い、現代ロシアのアヴァンギャルド音楽のホープとして熱い注目を浴びていたアレクセイ・アイギですが、けっこうキャッチーなことも手掛けるこの頃です。同グループとしてのこの新作は、ジャズ~フョージョン+プログレ的なカラー濃厚。けだるいキャラクターのヴォーカルを表に出していますが、曲はロマンティックなメロディのものが多く、すっと入って行けます。ただ、ロシア以外の音楽も聴き漁っている人の耳には、いつかどこかで馴染んだ音もいろいろ聴こえるかもしれませんが、味付けは独特です。 ![]() ●personnel:Oprica Ivacea (clarinet, alto sax), Ioan Ivancea (clarinet, vocal), Costica "Cimal" Trifan (trumpet, vocal), Radukescu Lazar (trumpet, vocal), Nicusor “Pusac" Cantea (trumpet), Daniel Ivancea (alto sax) , Constantin "Sulo" Calin (tenor horn), Laurentiu Mihai Ivancea (baritone horn), Constantin "Pinca" Cantea (tuba), Monel Trifan (tuba), Costel "Gisniac" Ursu (large drum), Nicolae Ionita (percussion) + guest: Dan Armeanca (vocal on 2, 3 &9), The Bulgarian Voices Angelite (chorus) ●tracks: 1. Doina, 2. Wild Silence, 3. Iag bari, 4. Fusty Road, 5. Lume Lume, 6. Jocul Boldenilor, 7. Hora Din Petrosnitza, 8. Banatzeana, 9. Tu Romnie, 10. Moliendo Cafe, 11.Balada Lui Ioani, 12.Besh O Drom, 13. Hora Andalusia, 14. Hurichestra, 15. So Te Kerau ?, 16.Hora Lautaresca, 17. Ginduri De Om Batrin, 18.Bubamara, +19. (video track) Manea Cu Voca 息詰まる程のスピードなのに、この躍動感と重量感! 身悶えを禁じ得ない位の哀愁と色気までも併せもったジプシー・ブラスの最高峰が織り成す究極のバルカン・ダンサブル・ミュージック!......音楽につられて景気のいいキャッチを書いてしまいました。ジプシー・ブラスが得意とするのは、哀愁を帯びた旋律をえぐいほどにメランコリックに奏でることと炸裂するエネルギッシュな演奏との鮮烈なコントラストの付け方です。底なしの悲哀の描写から、底抜けの喧噪的カーニヴァルまで奏でて人心にダイレクトに訴えることが宿命なのです。「民族のモザイク」と呼ばれるバルカンで成功するための絶対条件と言えるかもしれませす。そうした音楽的振幅の大きさの中で、どのあたりに特色を持つかで、どのバンドも個性をアピールしています。このルーマニアのジプシー・ブラスバンド“ファンファーレ・チォカリーア”は、「ジプシー・ブラス界最速」と定評がある通り、ハイ・スピードを誇り(200 beats per minutesまで可能)、なおかつダイナミックなリズムの躍動と切れ味の鋭さを失わないアンサンブル・ワークが最大の武器。バラードでの哀愁モード120パーセントというのは、だいたいのバンドができますが、躍動感と重量感も合わせ持ったハイ・スピード・プレイを実現できるバンドは多くはありません。西欧公演ではどの会場でも若者は踊り狂うか痙攣状態で、みんなほとんどトランス・モード。そんな噂は2000年の日本初来日公演によって現実化したことは今もって語り種。私は聴き逃し地団駄踏むこと4年。しかし2004年夏(8月21~29日)来日と聴いて救われた思いがします。今までアルバムを出すたびに世界中で大絶賛さたファンファーレ・チォカリーアです。中でも、ビデオ・トラックがボーナスとして付いた本作(火を吹くブラスの意味)は、スピードの中の洗練度を増しつつ、祝祭感の絶頂へ導く手口もますます巧妙化し、さらにルーマニア・オリエンタル・ポップのゴッドファーザーとして名高い歌手ダン・アルメアンチャ(Dan Armeanca)(ルーマニア版シャバン・バイラモヴィッチ!)や、ブルガリアン・ポリフォニー・コーラスの最人気グループ「アンジェリーテ(Angelite)」がゲスト参加もあり彼らの最高傑作として早くも評価が定着してます。 ![]() ●personnel:many Roma musicians' group in Kosovo, recorded in 1984-1991 ●tracks:1. Music fir horse races 2. Female music 3. Mastika 4. Zapevala sojka ptica 5. Instrumental prelude 6. Lament 7. Ilahija 8. Phuro Hamze 9. Talava 10. Amplified Talava 2. Dada sale 12. Improvisation 13. Female song medley 14. Turkish medley 15. Ati Rahegi Bahare 16. Lambada in 18. Lambada 最近またキナ臭い騒ぎが発生してしまったコソヴォのロマのフィールド録音集です。私はこのCDを渋谷Towerで買いました。エミール・クストリッツァの映画をいくつかご覧の方はこのカヴァー写真を受け入れることでしょう。買って大急ぎで帰宅して聴いたとき、私は震えました。クストリッツァがロマ(ジプシー)音楽家を画面に引っぱり出した理由が少しわかった気がしました。ぜひ聴いてください。音楽を正業とした人たちの長い歴史に関心のある人にとって重大な音源、と言ってしまいます。ユーラシアの音です。 ![]() Jony Iliev Band『Ma maren ma』(CD-ATR 0102) CD, Bulgaria/Roma music, 2002年発売 ●personnel:Jony Iliev (vocal), Boril Iliev (alto sax, clarinet), Stojan Stojanov (guitar), Martin Lubenov (accordeon), Ventsislav Radev (drums), Jovan Torbica (bass) + guests: Stoyan Yancoulov (percussion), Ateskan Useinov (guitar), Marx Marcov (guitar), Nico Lippolis (percussion), recorded in 2002 ●tracks:1. Arizona 2. Godzila Intro 3. Godzila 4. 17:50 5. Ma maren ma 6. Nasfalilo 7. Gypsy's kolo 8. Ma Rov 9. Nadire 10. Gaida cocek 11. Mig, mig 12. Ma devla 13. Ma maren ma instrumental けっこうな2枚目ジョニー・イリエフはブルガリア・ジプシー歌謡界の若手人気株。どんな声を想像しますか? シャバン系の渋い声で歌うことが多い中に、しばしば別人のクリアーなテノールの声が絡んでくるように感じることがあるんですが、これもイリエフ。かなり表情豊かな歌手です。アレンジも多彩です。アラブ歌謡、トルコ歌謡との線引き不可能。アルトサックスでは場末のひなびたプレイのボリルが、クラリネットになるとフラクタルな魅惑のブシまみれのプレイになるのも聴き物。アコーディオンのマルチンも綾なすコブシ装飾。 ![]() ●personnel:Nedko Dereuvski (clarinet, sax, kaval), Dimitar Lavtchev (gadukla, tambura, tarambuka, percussions), Atanas Mokolov (cimbalom), Spas Popov (accordeon), Stoil Stoilov (tambura, tarambuka), Maria Stoyanova (gaida, vocal), Nikolay Stoynov (kaval), Danka Tzvetkova (vocal) ●tracks:CD-1; 1. The wind of the Dnube 2. Wallachian suite 3. Maritu doro 4. Baro Havasi 5.Meka / CD-2; 1. Thracian suite 2. Maria's tune 3. Oriental suite 4. Aftentik melodi 5. Vioko これは私がブルガリアのフォーク系音楽やジプシー音楽を聴くと、つい参照したくなるCDです。ブルガリアのクラリネット奏者でパパソフ以外で最近話題になったスウェーデンのポリスタイル・クラッシュ・グループ(勝手にそう呼んでます)“ファーマーズ・マーケット”の一員として初来日に同行したトリフォン・トリフォノフ(また来日します)。彼は80年代に同国で人気を博したフォーク=ジャズ・アンサンブル“プロヴディフ”の中枢でした。ジャズの心得もあり、サックスとクラリネットの兼任でしたが、やっぱり上記イリエフのメンバーのボリルと同じことが言えるのです。変拍子でも装飾しながら疾走する技の凄みと、憂愁の極みのバラードでも絶品のコプシをつけた名人芸を披露することが当たり前という風情の演奏なのでした。彼らはモダン・アレンジなのだ(だから悪いという意味ではないですよ!)ということが、このCDを聴いてわかります。このグループの編成は若者中心で、ブルガリア各地に伝わる音楽を、過剰なアレンジをしないで演奏しているとのこと。真摯にブルガリアの音楽を腑分けした、いわばブルガリア音楽解体新書といったところですかね。魅惑のコブシや猛スピードの変拍子演奏はあまりないかわりに、オリエンタル調が大変印象的です。お試しを。 以上。 ▲
by jazzbratblog
| 2018-12-16 10:28
| Jazz Brat(マガジン)抄録
第5号「Jazz Brat」(2002年3月創刊のミニコミ誌)は4号からひどく間延びして、2003年11月にやっと発行できた。その5号から拙著のディスク・レヴューをここに引っ張り出した。CDをためてしまったのでいつもより少し多めの点数を掲載することになった。 セルゲイ・レートフ氏に連載を依頼してご快諾をいただき、早速1本目が届いたので掲載できたのは本当に嬉しかった。現在、その記事は当ブログに掲載してありますのでぜひごらんください。 https://jazzbrat.exblog.jp/14056879/ 表紙写真もレートフ氏提供。向かって左からクリョーヒン、アレクサンドル・カン、セルゲ・レートフ、アルカージー・シルクロペル。クリョーヒンと親友だったレートフ氏は拙者と同い年(フルシチョフのスターリン批判の年の生まれ)ということもあって)親近感を感じたせいで、今までソ連の音楽にすり寄って過ごしてきたということになるのかなぁ。この写真を見るたびに胸キュン。特別思い出深い号なのです。 来日中のトニー・ラーカトシュ(ハンガリー出身のサックス奏者)に少し時間をいただいて直接インタヴューできたのはラッキーだった。こちらの記事は今埋もれているでそのうちアップしたい。 ディスク・レヴューでは北里義之氏にハンガリーのフォーク盤2作をお願いした。 ![]() 第5号(2003年11月発行)の目次 特集(特になし) p1~6:トニー・ラーカトシュinterview;現代ユーロ・ジャズ・シーンが誇るサックスマンが語る 祖国ハンガリー/ジャズ/ロマ音楽 p7~12:セルゲイ・レートフ寄稿essay;セルゲイ・クリョーヒンについての覚え書き p12:ロシアのジャズがわかるホームページ p13~25:Disc Reviews
【第5号Disc Review 抄録】all text by Toyoki Okajima ![]() ● musicians: Bojan Zulfikarpasic (piano,Fender Rhodes), Scott Colley(bass), Nasheet Waits (drums), recorded in June 13, 15&16, 2003 , Brooklyn, USA ● tracks: 1. Set It Up, 2. Joker, 3. Flashback, 4. RunRene, Run!, 5. Bulgarska, 6. Z-Rays, 7. Groznjan Blue, 8. Sepia Sulfureux, 9. Niner, 10. Purple Gazelle (Angelica) 旧ユーゴスラヴィア出身のピアニスト、ボヤン・Z(ジュルフィカルパシチ)の久しぶりの新作(5作目)で、初のピアノ・トリオ・アルバム。共演者のスコット・コーリーとナシート・ウェイツはUSAのミュージシャンたち。5はブルガリアのトラッドを下地にしたもの、10はデューク・エリントンの曲、あとはボヤン自身のオリジナル曲です。切れ味のいい俊敏な弾きっぷりと深い抒情美、力強さと繊細さというコントラストや、バルカン情緒がごく自然に出るところなどのボヤンの持ち味は今回もよく映えています。オリジナル曲も素晴らしいものが揃っています。一例を挙げれば、「Z光線」と「グローズヌイの青」で、スケールの大きい曲想の中に、魅力的なメロディが次々と湧き出てきて起伏のあるストーリーが描かれるところは圧巻。また、「ブルガルスカ」に顕著ですが、ボヤンの場合、哀愁を奏でるにしても、引きこもらず、きりっとした面持ちであるところが大好きです。来日公演をおおいに期待します。 ![]() Vagif Mustafa-Zadeh『One Day In Kiev』(National Radio Company Of Ukraina NRCU 005)CD,ジャズ(アゼルバイジャン)1978年録音 ● musicians: Vagif Mustafa-Zadeh (piano), Elza Mustafa-Zadeh (vocal on 6), & others, recorded in 1978, Kiev ● tracks: 1. Pictures Of The Caucasia, 2. In Search Of , 3. Native Tunes, 4. The Man I Love, 5. A Present, 6. The Dark-Browed Girl, 7. The Song About The Embroidered Towel 本誌4号で紹介したヴァギフ・ムスタファ=ザデのラスト・アルバム『イン・キエフ』(旧ソ連・メロディア原盤)のリイシューCDです。神田神保町の「新世界レコード社」に入荷していました。オッド・ミーターに乗ってヴァギフのアドリブがうねる長篇トラック1、妻エリザのオリエンタル・ムードをたたえた歌声とヴァギフの魅力を圧縮したようなアドリブが前後するトラック6は、ユネスコ指定の無形文化財級じゃないでしょうか。ところで、ヴァギフが演奏しているヴィデオを幾つも見られるホームページができたことはご存じですか。画質は悪いけど、簡単にダウンロードできます(時間はかかるけどファンなら検索!すぐ行き着きます)。少年時代からの多数の写真、LPアルバムやカセット・アルバムの写真も載っています。没後25周年に相応しい素晴らしいホームページです。 ![]() Alex Rostotsky『Splashes』 (JBT CD 2002) CD,ジャズ(ロシア)2002年録音 ● musicians: Alex Rostotsky (el-bass), Yuri Parfenov (trumpet, flugelhorn), Sergeiy Golounia (tenor sax), Eugene Borets (synthesizer, piano), Sergey Ostroumov (drums,tabla), Keshab Kanti Chowdhury (vocal), Ivan Volkov (bass clarinet), choir, Zhou Qi (gu zheng), recorded in 2002, Moscow ● tracks: 1. Africa-My Love, 2. Three Ragas, 3. The Bells Rang In Novgorod, 4. Elrisha, 5. Garden Of Stone, 6. Oh You My Field, 7. It Was Said Long Ago, 8. Saigon`s Syndrome, 9. A Fisherman's Evening Song, 10. Zoroaster's Cube 親しみやすいメロディのオリジナル曲によって広く親しまれているアレックス・ロストツキィが、オリエンタルな素材を手がけたアルバムです。言ってみれば、オリエンタル・ジャズ・フュージョン・タッチ。アレンジ/アンサンブルの比重が大きい音楽ですが、トランペットのユーリィ・パルフョーノフの語り口の上手さがジャズ・フィーリングを強めています。やはり2人が組んだ『Once Upon A Time In The City Of Kazan』(Cosmic Sound)と同工のアルバムですが、こちらのほうが大衆版的内容。80年代のウエザーリポートを思わせる音づくりも感じられます。ロストツキー(1955年生まれ)は80年代初期からジャズ・ミュージシャンとして活動をしてきたベテラン。94年から「Jazz Bass Theatre」を標榜し、ストーリー性のあるステージをつくりを続けています。アルバムはけっこうたくさんあります。 ![]() ● musicians: Alex Rostotsky (el-bass), Yuri Parfenov (trumpet, flugelhorn), Stanislav Grigoriev (tenor sax), Alexey Kuznetsov (guitar), Yakov Okun (piano), Sergey Ostroumov (drums), Dmitri Sevastianov (drums), Lev Kushnir (piano), Vladimir Danilin (accordion), Eduard Zizak (drums), Keshab Kanti Zakarian (vocal) & others ● tracks: 1. You've Changed, 2. Dreams, 3. Ballad, 4. Let Me Stay In Your Eyes, 5. Etude, 6. Waltz For Ksenia, Good Bye, 8. May Lovers, 9. The Bells Rang In Novgorod, 10. Debussi’s Seven Notes Amid Temple Ruins Under Moonright, 11. Gardens Of Alcazar ロストツキィの名刺代わりのようなアルバムで、ピアノ・トリオ、アコーディオン入りコンボ、2管クインテット他、多彩な編成により、定評あるバラードを中心にした構成です。1、3、7以外はオリジナル曲。1と7は著名なアメリカン・スタンダード。3はラフマニノフのロマンティックな有名曲ですが、すっかりジャズ・バラードに変貌しています。この曲でピアノを担当しているヤコフ・オクニは、かのミハイル・オクニ(本誌3号で紹介)の息子さん。10はドビュッシーの著名曲にちなんだものですが、幻想的なジャズ曲といったところ。その曲や、他にも5や9でパルフョーノフのフリューゲルホーンが良い味を出しています。パルフェノフはかつて「ブーメラン」というグループで活躍した人で、メロディアに優れたLPアルバムがあります。11は上記の『Splashes』で顕著だったオリエンタル・ジャズ・フュージョンタッチ。 ![]() ● musicians: Yuri Yaremchuk (soprano sax, tenor sax, bass clarinet, percussion, voice), Natalia Polovinka (voice), recorded in November 11, 2001, Lyov, Ukraine ● tracks: 1-5: Five Fragnments ; fragment 1-5, 6. Homo ludens 2 ウクライナの即興演奏コンビのアルバムです。マルチ・リード楽器奏者のユーリ・ヤレムチュクは、モスクワのセルゲイ・レートフとともにロシア=ウクライナ・プロジェクトでも活動しているインプロヴァイザー(本誌3号セルゲイ・レートフ・インタヴュー併載ディスコグラフィご参照)。ナタルカ・ポロヴィンカは女優兼ヴォイス・インプロヴァイザー。二人の共同プロジェクト名が「ホモルーデンス」です。既成のイメージの旋律はおろか、楽句らしきものは排され、情緒感やメッセージの発露といったものも切り捨てられています。胸腔、復腔をはじめとする身体器官と連動している喉という振動体がポロヴィンカの楽器です。からだの音が彼女の演奏の起点です。2人とも自分の情感の動きを投影したよう音の出しかたはしないで、からだの反射にゆだね、音に感応することに徹しようとしています。限り無く言葉から遠ざかろうとしている演奏です。微細な移ろいをともなう音響の流れが聴こえてきます。 ![]() Vladimir Miller And Quartets『Fours』 (Long Arms CDLA 03052) CD,ジャズ/即興演奏(ロシア、イギリス他)1994~2001年録音 ● musicians: Vladimir Miller (piano), Alex Kolkowski (violin, electronics, on 1-4), Misha Zhukov (percussion, on 1-4, 8-12), Ansulman Biswas (tabla,percussion, on 1-5), Jon Dobie (el-guitar, on 5), Alexandr Alexandrov (bssoon, on 5,8-12), Sergey Letov (reeds, on 6-7), Vladimir Makarov (cello, on 6-7), Misha Udenitch (ds, on 6-7), Eduard Sivkov (reeds, on 8-12): recorded in 1994, 1995, 1999, 2001, London, Moscow ● tracks:1. Boris In Berlin, 2. Syrian Solace, 3. A Russian Lost In Rome, 4. Igor The Hunter, 5. Far Too Near, 6. Outbursts 1, 7. utbursts2, 8. Umbrella, 9. Cartoon Wedding, 10. Experiments On Film, 11. Silent Running, 12. Kabohidze In Paris 旧ソ連時代からのトップ・ミュージシャンが勢揃いした「モスクワ・コンポーザーズ・オーケストラ」や、タラソフ、レジツキーとの「トリオ・ウラジーミル」などの活動で注目を集めたウラジーミル・ミラーの新しいアルバム。4種のカルテット演奏が聴けます。「ネオ・アヴァンギャルド期」と画される80年代から興味深い音楽をクリエイトしてきたセルゲイ・レートフ、ミハイル・ジューコフ、アレクサンドル・アレクサンドロフの参加がそそります。「トリオ・ウラジーミル」での演奏のような空白の多い中に鮮烈な光彩が浮かび上がる演奏が、レートフ参加の6~7で聴けます。アレクサンドロフ参加の8~12は、それと対照的にかなり書き込まれたような演奏です。多かれ少なかれミラーが用意したきっかけをもとに演じられた即興演奏集です。作曲家ミラー、演奏家ミラーを好スタッフで共にアピールするアルバムです。 ![]() ● musicians: Valeriy Grohovsky (piano), Anton Revniouk (bass), Sergey Manoukyan (drums), recorded in January 6, 2002, Moscow ● tracks: 1. Blue Skies, 2. Cry Me A River, 3. Let's Fall In Love, 4. Speak Low, 5. Tamarindo Girl, 6. What's New, 7. Willow Weep For Me, 8. Bess, You Is My Woman Now, 9. You And I, 10. Be My Love 50年代のアメリカン・フィーリングがたちこめているオーソドックスなジャズ・ピアノ・トリオ演奏でです。演奏者はロシアの人たち。ガッツプロダクションが掘り出してくれた素敵な演奏です。帯では「セルゲイ・マヌキャン・トリオ」と謳っていますが、ピアニストは、テキサス大学でピアノを教えているというワレーリー・グロフスキー。マヌキャンはキーボード&ヴォーカルの人とばかり思っていましたがドラマーに徹し、実にしっとりと正攻法のブラシ・ワークを披露しています。曲目はいわゆるスタンダード・ナンバーが大半を占めています。小粋なスイング、リリカルなフレーズ、ということに徹した演奏で、タイトル通り「羽毛」のような軽やかさとソフトな肌触りが快感。どの曲の演奏も品の良いロマンスに満ちていますが、スローテンポで奏でた最後の「ビー・マイ・ラヴ」のピアノには特にうっとり。 ![]() Arkady Shilkloper, Alergre Correa, Georg Breinschmid『Mauve』 (Quinton 016-2) CD,ジャズ(ロシア、オーストリア)2001年録音 ● musicians: Arkady Shilkloper (French horn,Alpine horn), Alergre Correa (guitar, voice, percussion), Georg Breinschmid (bass) + guests: Endorigo Bettega (drums, percussion), Klaus Dickbauer (clarinet), recorded in January 15-21, 2001, Vienna ● tracks: 1. Kobra, 2. Presente To Moscow, 3. Dance Seven, 4. Bachiao, 5. Vindobana, 6. Amigo De Infancia, 7. Tema Nuovo, 8.Manhatten, 9. Funk Rog ロシアの天才的フレンチホルン奏者のアルカージィ・シルクロペルが、ウイーンの若手ジャズメンと組んだアルバムです。シルクロペルは、80年代に始まったミシャ・アルペリン(ピアノ)とのデュオやトリオでよく知られている人です。フレンチホルンといってもオーケストラの部品的な楽器というイメージフしかもたれないことが多いでしょうけど、シルクロペルの演奏を聴くと目からウロコが落ちるでしょう。シルクロペルが用意したオリジナル曲3曲は、どれも躍動するリズミックな曲で、まさに超絶の吹奏を披露。ウイーンのコンビの曲の多くはひたすらロマンティックなメロディが聴き所となっているブラジリアン調の曲ですから、シルクロペル自身のアルバムではあまり接しられなかった表情に出会うことができます。まろやかなトーンによる優しいフレーズがあいまって、心軽やかな気分をもたらしてくれます。 ![]() ● musicians: Andrey Kondakov (keyboards,vocal), Andrey Svetlov (el-bass), Sergey Ostroumov (drums), Val Belin (el-guitar), Yoel Gonzalez (percussion) + guests: Randy Brecker (trumpet, on 6), David Gilmore (el-guitar, on 6), Loran Robin (drums, on 4&6), recorded march 20 & September 23, 1999 ● tracks: 1. Balloons Of Many Colors, 2. First Train Blues, 3. Axelbanty, 4. Police, 5. S.P.B., 6. A Little Crazy, 7. Oriental Shock, 8. We Cannnot Play Blues, but Subway Is Clean Here (Song For Lenny White), 9. My Customer's Rhythm この「根無し草バンド」はピアニストのアンドレイ・コンダコフがリーダー格のジャズ/ブルース・フュージョン・グループ。コンダコフはウクライナに生まれ、ロシアで学び、ニューヨークで活動した時期もあるけど、現在サンクトペテルブルク在住。アンドレイ・スヴェトロフとヴァル・ベリンは共にラトヴィアのリガ出身。遍歴ののち、スヴェトロフは現在パリに、ベリンは現在ニューヨークに在住しつつロシアでも演奏しています。セルゲイ・オストロウモフはオランダを経てロシアへ帰省。ヨエル・ゴンザレスはキューバを去ってサンクトペテルブルク在住。生活場所だけでなくジャズ、フュージョン他と様々な音楽を経験してきた面々の寄り合い所帯、といったところですが、ブルース、ファンクのフィーリングは申し分なく、ジャズ・インプロヴィゼイションもお手のものとの、ユニットしてまとまった好グループです。 ![]() ● musicians: Vocal-Band (mixed chorus): Anastasya Modestova, Inna Tsekhanovskaya, Dmitri Kurunosov, Alexey Ribakov, Valery Konstantinov ● tracks: 1. Garota De Ipanema, 2. Sunduk, 3. I Will, 4. Vanika, 5. In The Mood, 6. Libidonika, 7. St. Thomas, 8. Skadji-Mnye Da!, 9. After You've Gone, 10. Chornii Kot, 11. Jubilee, 12. Work Song, 13. Love Is Here To Stay, 14. Lush Life, 15. 'Round About Midnight 「ヴォーカル・バンド」とはそっけないグループ名ですね。でも、正体はとても優れたロシアの混声ヴォーカル・グループです(女声2+男声3)。アカペラ(楽器伴奏なし)だけど非常に巧みに楽器音の模写を奏でることもできるグループなのです。コーラスはとても洗練されたもので、上質のハーモニーを聴く快感に満たしてくれます。技術点ではUSAの人気ヴォーカル・グループ「マンハッタン・トランスファー」を凌いでいると、私なら言い切ってしまうんです。パートリーの幅広さも素敵です。ボサノヴァの名曲「イパネマの娘」では、清涼感とロマンティシズムのブレンドが絶妙。スタンダード曲(9、13、15)の他、「イン・ザ・ムード」「セント・トーマス」「ワーク・ソング」「ラウンド・ミッドナイト」といったジャズ曲、さらにロシア物も同居していますが、まったく違和感ありません。 ![]() The Ganelin Trio 15-Year Reunion『Live At The Frankfurt Book Fair』 (Leo CDLR 375) CD,ジャズ(リトアニア/ロシア/イスラエル)2002年録音 ● musicians: Vyacheslav Ganelin(piano,synthsizer), Vladimir Tarasov(drums,percussion), Vladimir Chekasin(also sax,tenor sax,bass clarinet,voice), recorded in October 8, 2002, live at the Book Fair in Frankfurut ● tracks:1.15-Year Reunion, 2.Umtza 1987年10月を最後に3人揃って演奏することがなかったガネーリン・トリオの再会演奏の記録です。2002年8月、フランクフルトで催されたブック・フェアーでリトアニアが招待された際、同国が記念演奏会として企画したミニ・コンサートで実現しました。ガネーリン、タラーソフ、チェカーシンの3人はロシア生まれですが、70年代にリトアニアでトリオを結成し、フリージャズの先駆となり、多数の後進を育てたグループです(その後ガーネリンはイスラエル移住)。演奏に先立ち、次のように紹介されたとのこと。「ガネーリン・トリオはグループの一つということではすまないものでありまして、リトアニアおよび全ヨーロッパの文化史、精神史の一部なのであります」。長尺の1曲目の終盤、チェカーシンのソプラノ・サックスからこぼれた抒情的旋律が波紋を広げる感動的フィナーレののち、臨席していた同国大統領は駆け寄って3人を抱き締めたとのことです。 ![]() ● musicians: Vyacheslav Ganelin(piano,synthesizer,baset), Vladimir Chekasin(saxes, clarinets,voice,etc.), Vladimir Tarasov(drums,percussions) ● disc 1: Ganelin solo(1986)/Ganelin Chekasin duo(1980), disc 2: Tarasov & Chekasinduo (1987), disc 3: Ganelin & Tarasov duo (recorded in 1985, previously unreleased), disc 4:The Vladimir Chekasin Quartet (1988) ガネーリン・トリオの3人、ヴャチェスラフ・ガネーリン、ウラジーミル・チェカシン、ウラジーミル・タラソフに焦点を当てた4枚組。ディスク3のガネーリン&タラソフ・デュオが今回初登場で、他はリイシューです。それぞれの初出盤は、ディスク1のガネーリン・ソロは『Con Amore』、同ガネーリン&チェカーシン・デュオは『The Ganelin Duets』、ディスク2のタラーソフ&チェカーシン・デュオは『1+1=3』、ディスク4のチェカーシン・カルテットは『Anti Show』。ガネーリン・トリオは旧ソ連のフリージャズのパイオニアと紹介されることが多いですから、フリージャズを敬遠する人からは、うるさく騒がしい音楽とみなされがちですが、そんなことはありません。素材の選択、楽曲構成、演奏展開において既成のものにこだわらないという意味でフリーなのです。ソロ、デュオ、チェカーシンのグループにおいても同様です。 ![]() ● musicians: Theodosii Spasov (kaval, voice, dvoyanka), Yildiz Ibrahimova (vocal), Ognian Videv (guitar), Rumen Toskov (piano, harpsichord), Georgi Donchev (bass, gadulka), Stoyan Yankulov (tupan), Galina Durmushliiska (vocal), Simeon Shtrev (flute), Hristo Yotsov (percussion), Bulgarian National Radio Folk Orchestra, & others ● tracks: 1. Shake It, Gergina, 2. Straldja Rachenitsa(trad), 3. In The President's Bedroom, 4. On Those Years(trad), 5. At The Carding-Frame In Kubrat, 6. Levochevski Patatnik, 7. S hare-room Brothers, 8. The Mountain Got Dark (trad), Titla, etc. (all 18 tracks) ブルガリアの民族楽器カヴァルの代表的な名手、テオドシイ・スパソフの最新アルバムです(2003年発売)。タイトルは「固い土」を意味します。ジャケットの表紙に実物の土を入れた透明の袋を貼付してあります。スパソフはフォーク界のスーパースターですが、同時に即興演奏を好み、ジャズ・ミュージシャンとも密に共演してきた人物です。参加メンバーは、ジャズ界とフォーク界の選り抜きといった顔ぶれで、デュオ、トリオ、カルテット、フォーク・オーケストラとの共演他の多種の編成を組んでいます。文字通り超絶のカヴァル独奏も3曲収録。カヴァルはトルコのネイと同系の楽器です。ネイではハスキーな音色による瞑想的な演奏がお馴染みですが、スパソフは快速吹奏や、ラッパ的な破裂音他、多彩な音色も交え、純トラッド、前衛的な演奏、ジャズ的演奏と、全方位を示しています。 ![]() ● musicians: Roumen Toskov (piano, percussion), Rossen Zahariev (trumpet, flugelhorn, percussion, pipes), Valentin Gerov (viola), recorded in September 30, 1999 ● tracks: 1. Introduction, 2. Prt One, 3. 1st Episode, 4. Part Two:Movement 1, 5. Part Two: Movement 2, 6. 2nd Episode, 7. Part Three, 8.3 rd Episode, 9. Part Four, 10. Reprise ブルガリアの即興演奏トリオです。短寸の複管楽器と思われる笛の音がエスニック感をかすかに抱かせますが、ブルガリア的とかバルカン的といった典型的イメージをもった楽句は使われていないようです。が、実際はどうなのでしょうか...(この点がいつも難しい)。点描的というまではいきませんが音数の少ない演奏です。それでいて、鮮明な光彩感を感じさせるところが独特です。打々発止の掛け合いのようなところはいっさいありませんが、反応しあっていることは確かです。全体的に、現代クラシック音楽作品と言っても良いかも知れません。それでもジャズのキャリアのある人たちの演奏だろうと思わせるところがしばしば表れます。特にトランペットのザハリエフがそうです。が、素性はわかりません。ブルガリアのシーンへの興味を掻き立てられます。どなたかぜひご教示ください。 ![]() ● musicians: Boris Kovac (sax,sampler), Bogdan Rankovic (clarinet), Goran Penic accordion), Milos Matic (bass, tamburitza), Istvan Cik (drums, percussion), Coyote (vocal) ● tracks : 1. Danza Transilvania, 2. Interlude, Dammar Of Istanbul, Early Morning Waltz, 5. Beguine At The End, 6. Interlude At The Gang, 7. Midnight Memories, 8. Waltz From Careless Street, 9. Cha Cha, 10.Colour Of Remembrance, 11. Broken Waltz, The Last Interlude:Doina/In Bukovo, 13. At The End Of Time, 14. Birds メランコリー、絶望、希望、愛がせめぎあう現代のバルカンの人々の心理を絶妙に音楽化してきた異能の音楽家ボリス・コヴァチが、哀愁メロディによって、バルカンムードが濃密にたちこめる音楽を奏でるグループとして結成したのが「ラダアバ・オルケスト」です。バルカン音楽=ロマ音楽、と考えられがちですが、その図式はここではあまりあてはめないでください。バラード、ビギン、ワルツに乗って漂う哀愁のメロディが心に染み込んできた前作『The Last Balkan Tango The Last Balkan Tango』(CD-PIR 1573)は多大な評価を獲得しましたが、この第2作も同路線の充実作。サックス、アコーディオン他による独特の楽器編成の響きは他に類を見ないもので、せつなさで悶えそうになるほどのディープな情感を醸し出しています。2001年に来日したのですが、都合がつかず行けなかったことを悔やんでます! ![]() ● musicians: Elemér Balázs (drums, keyboards), Jozsel Balazs (keyboards), Gabor Juhasz (guitar), Matyas Szandal (bass), Andras Des (percussion), Gabor Winand (vocal), recorded Henriett Czerovszky (vocal), Mihaly Dresch (flute, on 9), David Yengibarjan (accordion, on 5), released in 2002, Hungary ● tracks:1. Bulgarian Folk Song, 2. Desire, 3. Spirit, 4. In My Sky At Twilight, 5. Around The World, 6. Johathan Livingston - Dedicated To Gabor Gado And To All Of My Friends, 7. Expectation, 8. Soldier Song (Swedish Folk Song), 9. Jag Tor Jag Far, 10. Szeretom E Tancba (Hungarin Folk Song) ハンガリーのジャズに興味のある人なら、エルメル・バーラーズの名前を何度となく目に耳にしたことがおありでしょう。彼は30代前半にして、紛れもないハンガリーのトップ・ドラマーです。USAの人気ギター奏者パット・メセニーとも共演したことがあるそうで、メセニーはこのアルバム用に、この上ない賛辞を寄せています。ブルガリア、スウェーデンのフォーク・ソングや、インド音楽のエコーが聞こえるアレンジの曲を配したり、ハンガリー・フォーク・ジャズのカリスマ的存在のミハーイ・ドレッシュを迎えたトラッドもあり、というふうにエスノ・ジャズの装いを示していますが、観光絵葉書然としたエキゾ感覚をまき散らすような寄せ集めではなく、熟成されたメロディをモチーフにした「ロマンティックなジャズ」というべきところに収斂していて、とても好感が持てます。 ![]() ● musicians: Jancy Körrvsy (piano), Roman Dylag (bass), Adam Jedzejowski (ds) + Bernt Rosengren (tenor sax, on 5-8), 1-2: recorded in October 29, 1961, live at Warsaw Philharmonic, Poland, 3-8: recorded in November 21-22, 1961 live at the same place as above ● tracks:1.All The Things You Are(solo piano) , 2. Gypsy In My Soull, 3. Suita Souvenir, 4. Garay Mood, 5.Trallalla, 6.Wodka Blues, 7.Ippidippida, 8.Sputnik ヤンチィ・ケロッシィがルーマニアのトップ・ジャズマンとして活躍していた時期にワルシャワで録音した2種のライヴを収録。まず独奏で「オール・ザ・シングス・ユー・アー」ですが、やけに大袈裟で気取った風と言いますか、まるでロマン派のピアノ・ソナタを聞かされているような気分になるんです。これは一種のジョークだったのかしら。なんのための? それはもう、ショパンを生んだポーランドの皆様への茶目っ気たっぷりのご挨拶でしょう。次の「ジプシー・イン・マイ・ソウル」はオスカー・ピーターソンばりの流麗かつスインギーな弾きっぷりで、アメリカン・スタイルを誇示しています。3曲目もお茶目もの? 誰かの模写か、わざとごつごつした弾き方をしてみせたりしていますよ。6「ウオッカ・ブルース」が楽しい。スウェーデン出身のベルント・ローゼングレンの酔っぱらい風ブルージー・ブロウが様になっています。ケロシーもごきげんにクダを巻いています。ケロシーは気の利いたエンターテイナーでもあったのですね。 ![]() Milan Svoboda Quartet『Dedication』(P&J Music PJ001-2) CD,ジャズ(チェコ)1990年録音 ● musicians: Milan Svoboda (piano,Ymaha DX7), Michal Gera (trumpet,flugelhorn), Alexej Charvat (bass-guitar), Jaromir Helesic (drums) recorded in 1990 ● tracks : 1. Dedication, 2. Twilight, 3. Spring In Boston, 4. Spring Song, 5. Year In Year Out, 6. Horizon, 7. Streams チェコ・ジャズ界の重要人物の1人、ミラン・スヴォボダ(本誌2号ご参照)の90年録音のアルバム。ディスクユニオンのバーゲン棚にあったのを見つけました。儲けものでした。スヴォボダのオリジナル曲集で、どれも味のある旋律ばかり。今となればエレキベースのリズム型がちょっと色褪せてるかな...とも感じますけど、演奏の腕前は皆一流であることがよくわかります。リリカルなフレーズを次々にくり出すスヴォボダのアドリブも聴きものですが、トランペットのミファル・ゲラもその点では負けてなくて、大満足。ゲラは1949年生まれ、プラハ・ビッグバンドを経て、自ら「Impulse」、「Gera Band」を率いつつ、スヴォボダとも密に付き合ってきたとのことで、一貫してスター・プレイヤー。リーダー作では『Impulse』(LP)、『Fata Morgana』(LP)他があり、参加作は少なくないとのことなので、ぜひ聴きたいと思います。 ![]() Svengali『Back To The Dream』(P&J Music PJ007-1) CD,ジャズ(チェコ)1994年発売 ● musicians: Radek Kramp (vibes), Alexej Charvat (bass, keyboards), Peter Binder (guitar), Michal Gera (trumpet, flugelhorn), Frantisek Kop (saxes, bass clarinet), Milos Vacik (percussion), Aladar Silady (drums), Leona Machalkova (vocal), Dezo Ursiny(vocal), Martin Kumzak (keyboards), released in 1994 ● tracks : 1.Back To The Dream, 2.Once Upon A Time, 3.The Dream About A Red House 1, 4.Private War, 5.A Song For Catherine, 6.You Who Want It-Leave It, You Who Don't-Take It, 7.The Dream About A Red House 2, 8.The Day Of The Accounting, 9.Agne's Wedding Shaw スヴェンガリはミラン・スヴォボダの上記ディスクでエレキベースを担当していたアレクセイ・ファルバートがアレンジの責任者を務めるフュージョン色の濃いグループ。多彩な楽器が使われてとてもカラフルなサウンドになっていますが、ジャズ的なアドリブとかインタープレイを楽しむような音楽ではないです。トランペットのミファル・ゲラも参加しているけど、刹那的なスパークリングを求められていない役回りなのが残念。でも、このグループのファンタジーの演出の仕方は興味深くて、最後まで付き合う気にさせてくれました。次のような理由です。はっきり言ってアレンジはUSAの流行追随型なのですが、そんな中にも、じわりじわりとロマンティック・ムードを深めていく根気強さが1点。それから、実はメルヘン調の愛らしい旋律が叩き台になっている曲が多いこと。ものは試しという方は、以上を御了解の上で。 ![]() V.A.『Jazz Goes To Town - Hradec Kralove 1995-1998』 (P&J Music PJ016-2) CD,ジャズ(ポーランド、チェコ他) ● musicians/tune: 1. Jarek Smietana Sounds/Sometimes In Winter, 2. Emil Viklicky's Quartet & Steve Houben/Cherokee, 3. Hues Of Blues/Walter Norris & George Mraz/First Excursion, 4. Jiří Stivín & Pierre Favre/First Excursion, 5. Jiří Stivín & Pierre Favre/Second Excursion, 6. Aki Takase ' Alexander von Schlippenbach/ Na, Na, Na, Na....Ist Das Der Weg?, 7. Robert Balzar Trio/Willy Nilly, 8. Rudolf Dasek & Trio/I'm A Sentimental Tango, 9. Krzysztof Popek Quintet/Letters And Leaves, 10. Tomasz Szukalski & Karel Ruzicka チェコで開催されたジャズ・フェスティヴァルのダイジェストを紹介する実況録音集。1995年~98年の記録を見る限りでは、地元のトップ・ミュージシャンと、欧米の著名ミュージシャンが数組出演しています。このCDには、地元勢は2のエミール・ヴィクリッキー(ピアノ)、4のイジー・スチヴィーン(フルート)、7のロバート・バルザール、8のルドルフ・ダシェク(ギター)、10のカレル・ルージチカ(ピアノ)(また、3のジョージ・ムラーツ[ベース]はUSA在住ですがチェコ出身者)。名実共に同国を代表する人たちの近況を概観できるありがたいディスク。スチヴィーンもダシェクも往年の創意にあふれた演奏に劣らない活気があって嬉しい限り。また、ポーランドのジャズに関心のある方にとっても、人気ギター奏者ヤレク・スミエターナ(1)、サックスのクシシュトフ・ポペク(9)、御大トマシュ・シュカルスキ(サックス)といった一流所の近況を窺うことができる選曲。 ![]() ● musicians: Boban Marckovic (flugelhorn, vocal) with his brass band + guests: Frank London (trumpet)’ Klezmer Brass Allstars, Mahmoud Fadl (percussion), Dilber Jasarevic BIBE clarinet), etc. ● tracks: 1. Balkan Fest, 2. Southern Comfort, 3. Sat, 4. Mundo Cocek, 5. Od Srca, 6. Povratak, 7. Sanja Samba, 8. Mere Yaara Dildara, 9. Magija, 10. Bugarcica, 11. Boban I Marko, 12. Bratski Cocek, 13. Biseri Srbije (part 1), 14. Biseri Srbije (part 2) バルカン・ジプシー・ブラスの頂点と言っても過言ではないボバン・マルコヴィッチ・オルケスターの新譜でピラーニャにおける3作目。ボバン・マルコヴィッチはバルカン・ブラスのメッカであるセルビアで長年にわたりベスト・トランペッターの評価を維持してきた大名手。彼のブラス・バンドはジプシー音楽ならではの哀愁と熱情、祝祭的な高揚感に加え、鮮やかな切れ味にも定評がありますが、今回はポップ・タッチの曲や、豪華ゲストも交えた意欲的トライも楽しめる、これまでにも増して聴き所に富んだアルバムとなっている。USAクレズマー界の重要人物フランク・ロンドン(Klezmatics)のクレズマー・ブラス・オールスターズとの共演曲(track 9)のメランコリーな味わいは逸品。バルカン・ブラスの次世代を牽引するであろうと目されているボバンの息子マルコのサラブレッドの輝きも聴き所の一つ。 ![]() ● musicians: Šaban Bajramović (vocal) + brass band, variety orchestra, etc. ● tracks: 1. Pijanica, 2. Vasilica, 3. Slavica, 4. Ando Beco, 5. Miro Mnori Nasvalili, 6. Ismail, 7. Jugoslavia, 8. So Te Kerav, 9. Basno, 10. Rovena Rovena, 11. Mimica, 12. Vaker, 13. Bunareso O Kapaka, 14. Pansto Cigara, 15. Maruska, 16. Marci シャバン・バイラモヴィッチはロマ歌謡の紛れもない巨星。1936年セルビアに生まれ、破天荒な青春時代を経て、1964年に初めてレコード録音を経験して以来、20枚近くのLP、50枚程のシングルを放ったといわれます。しかし、富を築いてもギャンブルですっからかんという人生。説得力のある歌いっぷりはバルカン全土に知られるところですが、行方知れずとなったりで、生涯の破天荒男。それでも音楽の才能は輝き続けました。ゴラン・グレゴヴィッチはシャバンの音楽から多くのものを得たことは周知の事実。エミール・クストリッツアは映画「黒猫、白猫」にシャバンを起用。このCDは、伝説の70年代の代表的LPアルバム2作『Gypsy King』と『Drunkard』から抜粋した16曲を収録。バルカン・ブラスの伴奏や、なつかしのヴァラエティ・オーケストラ調の伴奏は実にノスタルジック。 ![]() ● musicians: Olah Vince (guitar, violin, vocal), Toplica Ramiz (percussion), Varga Karlo (violin), Kurina Ferenc (bass), Kurina Michael(cimbalom) + special guest: Boban Markovic (trumpet on 9) ● tracks: 1. Azija Rromansa, 2. Sae Rroma Ando Them, 3. Me Sem rom, 4. Music Rroman, 5. Dance Rromalen, 6. India Rroma, 7. Rroma Adagio Sempre, Choro Rrom, 9. Vranje-Rromans, 10. A#-Rromans 「アース・ホイール・スカイ・バンド」は、すでに2度来日したノヴィサド(セルビア)のロマ・グループ。ボリス・コヴァチのラダアバ・オルケストのギタリストでもあるオラー・ヴィンツェがリーダーです。ヴィンツェは、ノヴィサドのフリーラジオ局「O-21」で毎日正午から放送されるロマの番組のディレクターを務めているとのこと(関口義人著「ロマ・素描」より)。ヴィンツェはハンガリー・ロマの家系とのことで、音楽もその色合いが濃いのですが、スラヴ的な香りを嗅ぐこともできます。インド、スペイン、地中海、中近東など、ジプシーの辿った道のりを集約したかのようなサウンドや、哀愁のメロディを程よいポップ感覚も取り入れてアレンジしたものも演奏し、なおかつサロン音楽的フィーリングも聴こえてきたりして多彩です。伝統的スタイルにしがみつかないところから、とても新鮮な音楽が生まれています。1曲で、ボバン・マルコヴィッチをゲストに迎え、聴き所を増強するというサービスぶり。 ![]() ● musicians: Mihajlo Lakatos, Olivera Vueo, Olivera Katarina, Todor, Doka Bas, Emila Misa, Nikola, Dragan Mladenoviae, Olga Dusaniae, & others ● tracks: Djelem Djelem, Rino, Niska Banja, Nu Nu, Bice Skoro Prospast Sveta, Divan Je Kiceni Srem, Ruski Tango, Slavuj, etc. (all 20 tracks) 旧ユーゴの「ニュー・シネマ」の旗手として重要作・問題作を連発したアレクサンダル・サーシャ・ペトロヴィッチ監督の代表作のオリジナルサントラからの精選アルバム。1929年パリで生まれたペトロヴィッチ(1929~94)は、プラハで映画監督学を学んだ後、ベオグラードで助監督をつとめながら名門ベオグラード大学で芸術史を専攻した後、監督となりました。66年の『Tri (Three)』は旧ユーゴにおける「ニューシネマ」の突破口となった重要作。ヴォイヴォディナのジプシーの悲惨な現実を描いた67年の『Skupljaci Perja』はカンヌで金賞を受賞。しかし72年の『Majstori I Margarita (The Master And Margarita)』は当局から、共産主義に対する攻撃であるとみなされました。世界のペトロヴィッチの評価はむしろ高まりましたがユーゴ国内では不遇を余儀無くされたのです。そして今ようやく再評価が進んでいます。このディスクでは旧ユーゴの偽らざる大衆音楽やフォーク音楽、ジプシー歌謡他をたっぷりと聴くことができます。 ![]() ● musicians: Rade Serbedzija (vocal), Livio Morosin (vocal, guitar), Mauro Giorgi (guitar, mandolin), Zoran Dordevic (percussion), Tomislav Sestan (bass), Danilo Serbedzija (guitar), Dario Marusic (violin) ● tracks: 1. Orihi Orihi (Walluts Wallnuts), 2. Violet Blossom, 3. Come And Gone, 4. Flower In The Button Hole, 5. The Return Of The Warrior, 6. Giovanin, 7. O Sunny Sunny, 8. A Woman’s Name, 9. 1914, 10. Girl, 11. Come Come, 12. Tonight We’re Playing For You, 13. Street Name スロヴェニアの名俳優&歌手ラーデ・シェルベジの最新アルバム。ラーデは40本以上の国内製作の映画に出演した他、近年は海外の映画にもしばしば招かれ(「Broken English」1996、「The Saint」1997、「Mighty Joe Young」1998、「Lies & whispers」1998、「Eyes Wide Shut」1999、「Mission: Impossible 2」2000、「Snatch」2001、「The Quiet American」2002)国際的に注目されました。すばらしい説得力をもったシンガーとして支持は厚く、アルバムも多く、これが6作目。ロシアの故ヴィソツキィのような存在感と言っても許されるでしょう。声はヴィソツキィとは異なりソフトな魅力ですが語り口は共通するものを感じさせます。当作は東欧的なフィーリングが濃厚なフォークタッチのアルバムです。アドリア海の北西のイストリア半島を拠点とするローカル・バンドがバックアップ。東欧トラッド調の味わいは秀逸です。 ![]() ● musicians/tune: 1. Esma Redzepova/Bolna Lezam, 2. Milan Zavkov/Gajdarsko Oro, 3.Biljan Stojakoski/Adje Civo Li E Ona Devojce, 4.King Naat Veliov-Kocani Orchestar/Alun Oro, 5. Vaska Ilieva/Son Sonila Ordanica, 6. Brass Band Maleshevski Melos/Orkestarsko Oro, 7. Vidanka Djordjievska/Aber Dojde, 8. Strune/Dvajspetroka, 9. Aleksandar Sarieski/Zajdi, Zajdi Jasno Sonce, 10. Brass Band Maleshevski Melos/Nevestinsko Oro, 11. Ilija Ampevski/Pembe, Pembe, 12. Esma Redzepova/Nema Fadje バルカンの1国、マケドニアの音楽を代表するトップ歌手や演奏者たちを選りすぐったコンピレーション・アルバム。マニアとか研究者向けの編集ではなく、同国で現在真に愛されている大衆音楽を集めたものです。ロマ音楽界からはディーヴァとして名高いエスマ・レジェポーワや人気ブラス・バンドのコチャニ・オーケスター(ナート・ヴェリコフの新バンドの方)とフォーク・ブラス系のマレシェフスキー・メロシュを選んで要所をおさえつつ、伝統フォーク界からのセレクションも充実。珠玉のコブシが愛されてきたアコーディオンのミラン・ザフコフ、ビザンチンの香りも麗しい大ベテラン歌手ヴァスカ・イリエヴァ、憂愁バラードの深みが心を打つヴィダンカ・ジョルジエフスカヤ、フォーク・アンサンブルの要を握る仕事師集団ストルネ、若きクラリネット・ヴァーチュオーソ、イリヤ・アンペフスキー他。ミッドプライスで買えます。 ![]() Dobranotch『Musique Russe & Yiddish』 (Kalias kls 008) CD,ユダヤ音楽(ロシア) ● musicians: Sergey "Babadjan" Plitkin (mandoline, percussion, mandola, vocal), Konstantin Filatov (bass, vocal), Dmitry "Pyatatchok" Hramtsov (violin, guitar, vocal), Oleg "Alic" Drobinsky (clarinet, flute, vocal) ● tracks: 1. 7'40 A.M., 2. Yoshk, 3. Freylekh , 4. Otz Tots Perverotz, 5. Dobranotch, 7. Hora, 8. Kogda My Byili Na Voine, 9. Scotchne, 10. Troptyanka, 11. 7'40 P.M (or Twenty Eight) これはロシアやウクライナのユダヤ人の間で伝えられてきた音楽を若手グループが演奏したものです。ライナーノーツによれば、婚礼のときに興じるダンスにおける定番曲とのことです。いわゆるクレズマー音楽という範疇に属する音楽が大半を占めますが、オデッサで起こった惨たらしい事件を伝える4などは、スラヴ・フォーク・ソングのブレンドの具合が独特。6、11もオデッサ由来。グループ名ともなっている5は婚礼の来賓歓迎するクレズマー曲。8はコサックの歌で、ユダヤ色は薄め。10はトランシルヴァニア由来の曲とウクライナ由来の曲をセットにしたもの。奥底にリチュアル的指向をもっているのか、独特のストリート感と祝祭感を漂わせた音楽です。ロシアにおけるユダヤ音楽に関心の深い人におすすめします。 ![]() ● musician/tune: 1. Nogu Svelo/The Little Chinese Bells, 2. Leprikonsi/Chicks Don't Fall In Love With Me, 3. Markscheider Kunst/The Dance, 4. The Red Elvises/Cosmonaut Petrov, 5. Spitfire/Rio-Rita, 6. Zdob Si Zdob/A Gypsy And A UFO, 7. Leningrad/WWW, 8. Sveta Kolibaba/Hey DJ, 9. Distemper/Flight For Living, 10. Leonid Soybelman/A Guy, 11. La Minor/A Gir In A Cotton Dress, 12. 3D/In A Hip Club, 13. Amsterdam Klezmer Band/ Limonchiki, 14. VV/ You Took The Piss Out Of Me, 15. RotFront/The Robots, 16. St.Peterburg Ska-Jazz Review/Trip Back To Childhood これは便利重宝、ロシアの現代ポップスやロックの美味しいところをざっと賞味できるコンピレーションです。仕掛人は、ベルリンへわたったロシアの若者二人、ウラジーミル・カミネルとユーリィ・グルツィ。お互いのロシア音楽のレコード・コレクションをもとに、DJをつとめ「ロシア・ディスコ(ルッセン・ディスコ)」企画を打ったところ、ベルリンのロシア人コミュニティの間で評判となったばかりか、それ以外の若者たちにも飛び火して、一気にカルチャー現象になり、本まで出したとか。そのダイジェスト的CDがこれです。ロシアで人気を博したポップ、ロックを16曲収録(エストニア出身者、オデッサ出身者、ミンスク出身のグループなども含まれています)。いろんな流行スタイルが聴こえてきますが、同時にロシアの香りもぷんぷんたちこめる濃密さ。
小特集 ポーランドのMÓZGが発信する音楽ムーヴメント (オルタナティヴ・ジャズ!?) ● musicians: 1. Habanera Z Opery, 2. Mazzoll & Arhythmic Perception, 3. Teleecho, 4. Trytony, 5. Sylvie Curvoisier & Tomasz Pawlicki, 6. Zdzislaw Piernik & Slawomir Janicki, 7. Pieces Of Brain, 8. Maestro Trytony, 9. Kazik Staszewski, 10. Maslo, 11. The Identity Of Relative And Absolute, 12. 4 Syfon, 13. Cardida De La Luz, 14. Barondown, 15. Tymon Tymanski, 16. Fred Frith recorded during 1994-99, Poland Mozgは音楽、演劇、映画、絵画などのために開放されたクラブ的スペースの名前(1994年創設)。CDレーベルとしても活動していて、このディスクは過去に出演したミュージシャンたちの演奏を収録したコンピレーションCDです。ジャンルというものには制約はないようです。フレッド・フリス、ジョーイ・バロンのバロンダウン、シルヴィー・クールヴォアシエのトラックも含まれています。かつてのニューヨークの「キッチン」を思い出させるムードが感じられます。Mozgはポーランドの新しい動きの震源地と言ったところでしょうか。 ● musicians: Mazzoll (metal & bass clarinets), Kazik (vo, as, sample), Janusz Zdunekl (trumpet), Slawomir Janicki (bass, soprano sax, guitar), Jacek Majewski (drums,percussion), Tomasz Gwincinski (percussion), recorded in 1996&97 ● tracks:1. Mozg nie jest w glowie, 2. Canadian in Heaven(dedicated to R. Lussier):a.try kwadranse/ b.neich zyje polski dzez, 3. Listy Schindlera, 4. Wszyscy Polacy, 5. Pranie Brudow, 6. Ostanie Szien Na Sloncu, 7. Oto nadchodzi Pan, 8. Ta Ohydna Sila Czyli Wolne Zwijazki, 9. (Mozg) Jest w Glowie, 10. Rozwoj Potegi Woli cz.II, 11. Sziwy w Zawieszeniu, 12. Wasacze na Maszt, 13. Nie ma towaru w miescie, 14. Kapa Kazika, 15. Rebelia w Babilonie, 16. Tribute to Pereoczko (dedicated to Jabosik), 17. Wizja Preisnera, 18. Wszystkie moje dziewczyny wyszly jus za may, 19. Pisn o smuthny m Rumunie, 20. Contemporary Klezmer-dance version ジャズは大好きだけどオーソドックスな洗練や欧米のトレンディなスタイルには関心がなく、自由な発想で曲を作り、演奏したいというような欲求を感じさせる演奏です。さらに言えば、コメダとかスタンコなどからの流れを感じさせないものです。クラリネットのマゾーラ、トランペットのヤヌシュ・ズドネクのプレイはフリージャズのたしなみを多分に感じさせますが、深刻な表情を伴うものではなく、ヴォーカルのカジクともども飄々とした風情です。最後のトラック「コンテンポラリー・クレズマー」のアンチクライマックスな軽やかな演奏ぶりがとても印象的ですが、この人たちがジューイッシュ系かどうかは定かではありません。 ● musicians: Janusz Zdunek(trumpet), Tomasz Glazik(alto sax), Wladyslaw Reftling(bass-guitar), Jacek Buhl(drums)+ guests: Krzysztof Gruse(voice), Mateusz Janiszewski(voice, melodica), Zbigniew Zygmunt(flugelhorn), Krzysztof Beszczynski(trombone), Artur Wislicki(tenor horn), Jaroslaw Lazarski(tuba), recorded in 1999 ● tracks: 1. Dance, 2. The Dead Hours, 3. Show Your Legs, 4. Krakowiak, 5. The Latest Drops, 6. Emission, 7. Steel, 8. Rozogi, 9. God Sees You, 10. Hard And Blunt Drives, 11. Yes And No, 12. Masa, 13. Guests Are Coming, 14. Noise, 15. Game, 16. Look Up, 17. May They Live One Hundred Years トランペッターのヤヌシュ・ズドゥネクがリーダーを務めるカルテットのアルバムで、ループ的なドライなリズム・パターンに乗って管楽器の二人がアドリブや掛け合いを繰り広げる、というのが基本型。曲はヤヌシュのオリジナルで、オーソドックスなものは皆無。フリージャズ的な曲もありますが、混濁した局面はなくて、サウンドイメージは常にはっきりしています。その点でジョン・ゾーンのマサダを連想させる時もあります(曲想では共通点なし)。初期のミニマル・ミュージック的な手法もお好みのようです。フォークロア的な情緒感を出した曲も少しあります。 ![]() Arhthmic Brain『From The Beginning To The End』 (Mózg CD 007) CD ● musicians: Mazzoll (metal & bass clarinet, prepared clarinets), Slawek Janicki (bass), Jacek Majewski (drums, percussion) + guest: Tim Flavio (prepared piano), recordede in December 2002 live at club Mozg ● tracks: 1. The Song Of A No-Sad Romanian-33 Years Later, 2. We'd better Smoke Down Here So It'll Stink Less Up There, 3. No Small Feat-To Be Able To Weep, 4. Things To Do When Life Surpases Dream (part 1), 5. Not To Be Told To Anyone, 6. Mystic Dyckus, 7. Thirn Beards And Wholewheet Bread, 8. Dickregad The Accounts, 9. Our Homeland: Goodness Goodness Goodness Mózg系ジャズの中核となっている様子のクラリネット奏者のマゾール、ベースのヤニッキ、ドラムスのマジェフスキのトリオ「Arhthmic Brain」 のライヴ・アルバムです。即興演奏主体ですが、エモーショナルに丁々発止反応しあうものではなく、音素材を提出しながら進行方向を即時的に決めて行こうとしていることがうかがわれます。 ![]() Pieces Of Brain『Crash The Car Daddy』(Mózg CD 006) CD ● musicians: Jon Dobie (guitar, alto sax, soprano sax), Slawek Janichi (bass, el-bass), Jacek Majewski (drums, percussion), recorded in 1998-2000, live at Mozg Club & Studio F, Poland ● tracks: 1. Crash The Car Daddy, 2. Ayler's Song, 3. Silk Ow Swim, 4. Get A Head, 5. That Sinking Feeling, 6. Shot, 7. Human Being, 8. Brand Named Endween, 9. Blaze Of Glory, 10. Neck And Neck, 11. Nightcrawler, Up Into The Black Sky, 13. Coffin And The Grave Digger, 14. Zzaj いきなりクラッシュする爆音なので身構えてしまいましたが、乱暴なそぶりではないので耐えていると、アルバート・アイラー賛歌のようなトラックに移り(2)、3からは80年代ニューヨークのノーウェイヴ的なフィーリングの演奏、ネイキッド・シティ的圧縮ショート・ピース、ブリティッシュ・インプロ系の様相を呈する演奏など、さまざま。この演奏でも、サウンドの混濁感はないし、ヒップを気取っている風でもなくて、真剣に即興演奏に真剣に取り組んでいることがうかがわれます。 ● musicians: Tomasz Gwincinski (guitar), Tomasz Pawlicki (piano, flet, keyboards), Renata Suchodolska (cello), Tomasz Hesse (bass-guitar), Rafal "Gorzyc" Gorzycki (percussion), recorded in 1996, Poland ● tracks: 1. Intro, 2. Kalambury, 3. Electric Mandala, Enoptronia, 5. Planiergerat, 6. estem Ufo, 7. Herbaka Yassowa, Tulku, 9. Columbo, 10. Opus Hokus ジャズのフィーリングは多分にあるのですが、アドリブのスリルとか味わい云々ではなく、グループのサウンドでアピールしています。ファンタジック・ジャズ&フュージョン、なんて言っても伝わらないでしょうけど...。それぞれの曲はとても手がこんでいて、ついつい最後まで付き合ってしまいます。
ゲスト・レヴューアー:北里義之氏 Teka『Oskelet - Ancient East』(Teka Alapitvany TVM 117) CD,フォーク(ハンガリー) ● musicians: Balazs Vizeli (vln, vo), Gyorgy Lanyi (vla, duda), Beatrix Tarnoki (hurdy-gurdy, vo), Pal Havasreti (b, tekero, utogardon, vo), Kalman Balogh (cimbalom), Mihaly Dresch (fl, sax), Balazs Szokolay (duda, sax), Robert Kerenyi (fl), Judit Koczka (vo), Eva Fabian (vo), Ferenc Sara (dance, vo), Zsuzsanna Varga (dance, vo), recorded in April, 2001 ● tracks:1. Porzik a hegyi borozda..., 2-4. Nyisd ki rozsam ablakidat..., 5. Verd meg Isten, verd meg azt, kinek szive nem igaz..., 6. Lanyoknak az agya, rozmaring a faja..., 7-9. Magyarok Moldaban, 10-14. Arad es Bihar megyei roman nepzene, 15. Szep pavak repdesnek..., 16-17. Szintezis, 18-21. Keserves, hejsza, cigany csardas, sebes czardas (抄録)タンツ・ハーズ運動を最も遠くまで歩きつづけようとするグループ「テーカ・アンサンブル」の『古代東方』はハンガリーの古い記憶を今日の世界に引きずり出している。 ![]() Besh o Drom『Can’t Make Me!』(Asphalt Tango / Ahora : Beans BNSCD-880)CD,フォーク(ハンガリー) ●musicians: Adam Pettik (derbuka, water can, perc, vo), Gergo Barcza (as, ney, vo), Attila Sidoo (g, vo), Jozsef Csurkulya (cimbalom, vo), Peter Toth (tp, vo), Laszlo Bekesi (ts, cl, vo), Tamas Zsoldos (bg), Monika Juhasz (Mitsou) (vo), Geza Orczy (tapan, buzuki), DJ Mango (rap, scratch), Busa (oral scratch) ● tracks: 1. Nekemtenemmutogatol oro, 2. Neyem, neyem..., 3. Csango Menyhart, 4. Engem anyam megatkozott, 5. ntroduction, 6. Cigansko oro, 7. Afghan, 8. Csujogato, 9. Pergeto, 10. Koczkae, 11. Kanna solo, 12. Igenyes legenyes (man's dance), 13. Manocsavo, 14. Szeles vilag (Big Wide World) (抄録)鉄のカーテンが引き裂かれたからには、これまで封印されてきた音楽の数々を、一度爆発的に解放しなくてはとばかりに、現代を超スピードでひた走るベッシュ・オ・ドロム待望のセカンド。前代未聞のサウンドを作りあげている。
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by jazzbratblog
| 2018-11-03 15:27
| Jazz Brat(マガジン)抄録
引き続き、「Jazz Brat」(2002年3月創刊のミニコミ誌)から、拙著のディスク・レヴューを引っ張り出した。今回は第4号掲載分(2003年7月)です。 特集ページは、「東欧スラヴのジャズ・ピアノ探訪vol.3:ソ連/ロシア編Part 2」で、全22人の略歴と主要レコードを紹介。鈴木正美氏の連載「セルゲイ・クリョーヒンと1980~90年代の前衛音楽」の第3回は、ポップメハニハの到達点について論じていて引き込まれた。ディスク・レヴューでも鈴木氏にタラーソフ展で販売されたCDのレヴューをお願いした。また、北里義之氏に、ハンガリーのグループ「マカーム」の2作をお願いした。 第4号の目次: 特集 東欧スラヴのジャズ・ピアノ探訪vol.3:ソ連/ロシア編Part 2 P.1~21:ソ連/ロシア編Part 2:シャフラーノフ、チジク、ツファスマン、ドミートリエフ、ナイソーオ、ナイディッチ、ナザリューク、ナバトフ、ファイン、フィグリン、プタシュカ、プラウスカス、ブリーリ、プルッサコフ、ミサイロフ、アジザ・ムスタファ=ザデ、ヴァギフ・ムスタファ=ザデ、モロコエードフ、ラジン、ラナップ、ルザス、レヴィノフスキー P.22~25:連載 セルゲイ・クリョーヒンと1980~90年代の前衛音楽 第3回/鈴木正美著 p.26~29 ディスク・レヴュー 【第4号Disc Review】all text by Toyoki Okajima ![]() ●personnel:Mario Stanchev (piano), Roger Nikikoff (tenor sax), Michel Barrot (trumpet), Francesco Castellani (trombone), Gerard Guerin (bass), Alain Couffignal (drums) ●tracks:1.So What Dilmano, 2. L'Arrivee des Barbares, 3.Vendredi 12, 4.Jack's Dilemma, 5.Sangoma, 6.Berlin '89, 7. Dukeology, 8.Hesitation, 9.Yva, 10. Priyatelstovo, 11. Chacone, 12. Vivane, 13. Pop ブルガリアのソフィア出身、フランス在住のピアニスト、マリオ・スタンチェフの新作。楽しみ所が多いです。まず、グループ演奏の1とソロ・ピアノの10は、ブルガリア調の変拍子音楽に目のない人にアピールするトラック。1ではまず自分でエレジー調に口ずさみ、次いでアンサンブルで舞踊調にリズムを明確に提示し、今度はジャズ的ビートに乗ったメンバーのソロも出るという構成。なんか得した気分。10は1人ポリリズムによる即興演奏。さらりと凄いことをしています。マリオの曲は、ソロで演じた5が象徴するようにロマンティック・メロディが多いのですが、アレンジにかなり凝っています。4と11がそのショウケース。参加メンバーは皆優秀でアンサンブルは良い色合いが出ています。 ![]() ●personnel:Milcho Leviev (piano), Anatoly Vapirov (tenor sax) live in Varna, Bulgaria ●tracks:1.In A Sentimental Mood, 2.Lullaby Of Birdland, 3.Sugar, 4.What's New, 5.What Is This Things Called Love, 6.Angel Eyes, 7.Summertime ブルガリア出身でUSAのジャズ界とショービズ界で成功したピアニスト/アレンジャーであるミルチョ・レヴィエフと、ロシアからブルガリアに移住したアナトーリイ・ヴァピーロフとのデュオ。黒海のほとりのリゾート地ヴァルナで行われたコンサートのライヴということで、このタイトルです。エリントン(1)、ガーシュイン(7)他、言わずと知れた曲が大半。ブルガリア・トラッド調とか、ロシア調といった趣はなくて、アメリカン・ジャズの夕べといったセッティング。リラックスしたムードの中に、即興演奏にたけた2人のことですから自由闊達な変奏や、これぞダイアローグというべき互いの意趣返しの妙も味わえます。どっちかというとレヴィエフのほうが進んで仕掛けている様子。 ![]() ●personnel:Valery Kiselyov (clarinet), Fiodor Andreyev (piano on 3-7, 11-14), Gennady Fomenko (piano on 8-10), Vladimir Soloviov (piano on 1&2), Vladimir Frolov (guitar on 1&2), Boris Kartovitsky (bass), Fiodor Andreyev (drums) ●tracks:1.Moon Over Bourbon Street, 2.You'd Be So Nice To Come Home To, 3.St.James Infirmary Blues, 4.Stompin' At The Savoy, 5.Stars Fell On Alabama, 6.South Of The Border, 7.Ain't Misbehavin', 8.Joyee Samba, 9.The Preacher, 10.Emily, 11.No More Blues, 12.Lullaby Of Birdland, 13.Quintessence, 14.Russian Lullaby 『ロシアン・ジャズクラリネットの至芸』と題して新世界レコード社(神田神保町)がずいぶん前から帯付きで発売してきたCDです。ワレーリー・キセリョーフはロシアでは著名な、クラシックなジャズもモダンも両方上手いクラリネット奏者です。スティングの1で始まりジョビンのボサノヴァもあるという寄せ鍋レパートリーですが、八方美人風にはしゃぎまわることなく、まとまっています。今回紹介したのは、ここに3人もピアニストが参加しているからで、ピアノ特集の追補の意味を含めています。3人ともオーソドックスな演奏に徹し、ソロも短いものばかりですが、そこからでも確かなジャズの心得をもった人たちであることがわかります。この3人も氷山の一角というのが実情としたら、今後のロシア・ジャズも捨てたものじゃないかな。 ![]() JANOS GONDA『Pictures-Memories』BMM 9904-26173630,CD,Jazz(ハンガリー)1999年録音 ●personnel:Janos Gonda (piano), Balazs Berkes (bass on 01-06) ●tracks:1.'Round Midnight, 2.Challenge, 3.Come Rain Or Come Shine, 4.Too Young To Go Steady, 5.My Foolish Heart, 6.Duet, 7.Stride Piano, 8.Prayer, 9. Belinda, 10. Visons Of Memory, 11.For Three Hands, 12.Pipe's Bass, 13.Sixteenth Pulsation, 14.Dance In Changing Measure, 15.Eight Bars Blues 第2号で紹介したハンガリーの素晴らしいピアニスト、ヤーノシュ・ゴンダの比較的新しい録音のアルバムです(横井雅子さんのご協力でやっと聴けました)。ハンガリーのトップ・ベース奏者として名高いバラース・ベルケシュとのデュオで6曲、ソロで9曲収録。2と7~15はすべて珠玉旋律のオリジナル曲。アメリカン・スタンダードの解釈は瀟洒で気品があり、しかも「アメリカ」的なムードを醸し出すツボを心得ています。フォーク調とブルースの美味なカクテルというべきル自作曲2、抒情美極まった8、10の味わいは無類。11~15は「子供のために」と副題された小品集で、ジャズとハンガリー・フォークの共通点をズバリ要約して子供達を誘うといった凝った趣向が下地にある良心的音楽。 ![]() LESZEK KULAKOWSKI『BALTIC WIND』Not Two MW 728-2,CD,Jazz (ポーランド&USA) 2000年録音 ●personnel:Leszek Kulakowski (piano), Eddie Henderson (trumpet, flugelhorn), Emil Kowalski (clarinet, bass clarinet), Ed Schuller (bass), Jacek Kochan (drums) ●tracks:1.Sunrise-4:40, Ustka Beach, 2.Zefirek, 3.Japanese Tune, 4.Baltic Wind, 5.Igraszki Mew, 6.Chinese Tune, 7.Sunset-22:22, Ustka Beach ポーランドのレシェク・クワコフスキのオリジナル曲集です。1曲目、緩徐なイントロから一気にポーランド。パーソネルを知らずに聴けばコメダかスタンコの名が浮かぶことでしょう。2曲目はロマンスとメランコリーが相半ばした素敵なジャズ・ワルツ。レシェクはブレスの長い語り口の、押し寄せる波のようなアドリブ・ソロ(往年のスティーヴ・キューンと似た呼吸感)。これがレシェクの持ち味です。しびれますよ。4曲目も同系の演奏です。メジャーマーケットのトレンドの見本市のようなところは皆無で、内から湧き出たものを差し出した音楽集です。体温や脈を感じます。USAのエディ・ヘンダーソンの貢献度は実に大きいです。こんなにも豊かな語り口の持ち主だったとは。 ![]() ●personnel:Jo Mikovic (tenor sax), Kalman Olah (piano), Janos Egri (bass), Imre Koszegi (drums) ●tracks:1. Moon Over Bourbon Street, 2.You'd Be So Nice To Come Home To, 3.St.James Infirmary Blues, 4.Stompin' At The Savoy, 5.Stars Fell On Alabama, 6.South Of The Border, 7.Ain't Misbehavin', 8.Joyee Samba, 9.The Preacher, 10.Emily, 11.No More Blues, 12.Lullaby Of Birdland, 13.Quintessence, 14.Russian Lullaby ディスクユニオンの新宿ジャズ館の中古盤コーナーで長らく売れ残っていていつも目にしながらレジに持っていかなかったCDですが、ハンガリーの若手名手カールマーン・オラーが弾いていることに気がついて、あわてて店に走りましたら残ってました。ふぅ...。リーダーのジョー・ミコヴィッチは1940年ベオグラード生まれですが、60年代半ばにドイツに移り住んだそうです。これはオリジナル曲集で、けっこうロマンティックな曲が何曲かあります(2、4、6など)が、セルビア・トラッドとかバルカンとかは抜きにして語るべきテナーです。カールマーンのピアノはピチピチと気味いいですよ。アドリブ・フレーズも美味。特に4ですね。ベースとドラムスはハンガリー屈指の実力者たち。 ![]() ●personnel:Ognjen Popovic (clarinet, soprano sax, kaval), Vladimir Nikic (bass-guitar), Sorin Boljanac (accordion), Vlada Jovanov (percussion), Mihajlo Jovic (bass prim), Philip Jundt (flute), Vlada Jannkovic (guitar), Samu Kis (clarinet) ●tracks:1.Na Svadbi, 2.Kol'ko Para, Tol'ko Muzike, 3.Babylein, 4.Domnul Brahms, 5.Moj San, 6.Friends, 7.Sedam Godina, 8.Suite A La Romales, 9.Vino La Mine, 10.Carigdad, 11.Banat Groove, 12.Balkan Rumba, 13.Zamfirescu, 14.Pejzaz 関口義人さん著『バルカン音楽ガイド』(青弓社)で紹介されているオグニエン・ポポヴィッチ率いるセルビアのグループ「オグニエン・イ・プリヤテリ」のアルバムです。楽器編成からロマ音楽とかクレズマー音楽を想像する人が多いと思いますが、これはそうとう多彩な材料を使ってアレンジした音楽です。憂愁のバルカン・バラードや魅惑の舞踊調もありますが、クラシック風味のパストラル調もうまく使っています。思うに、バルカン音楽がロマ音楽に集約されがちなことへの異義も込めて、バルカン音楽の多様さをアピールしたものと僕は解釈しています。その意味で、「バルカン・ルンバ」が他のどの曲よりもそそってくれます。旧ユーゴのトラッドもブルガリアのトラッドもクレズマーもロマも混ぜ合わせてルンバ調でまとめた感じ、好きです。 ![]() ●personnel:Katarzyna Szurman (old Polish fiddle, vocal, jingles), Maja Mayall Kleszcz (bass, grimace), Sylwia Mazura Swiatkowska (violin, trad fiddle), Wojciech Szpak McKrzak (violin,jews harp), Piotr Prof. Glina glinski (baraban drum), Maciej Herszt Szajkowski (frame drum) + guests: Marta Stanislawska (old Polish dulcimer), Piotr Korzen Korzeniouski (trumpet), Maciej Cierlik Cierlinski (hardy-gurday) & others ●tracks:1.To You Kasiunia, 02.Chassidic Dance, 03.At My Mother's, 04.I Had A Lover, 05.A Red Apple, 06.Traditional Rural Polka, 07.Who Is Getting Married, 08.Clear Water, 09.What Have You Been Doing Kasia, 10.Polka Folkisdead, 11.The Rain Is Falling, 12. Cranes, 13.Maydow, etc. 「ハードコア・フォーク」ということで人気のポーランドのグループ(1997年結成)、ワルシャワ・ヴィレッジ・バンドのデビュー・アルバムです。ハードコアといってもパンクとは別物です(念のため)。6人の若い男女のグループで、楽器編成もサウンドもとびきりユニーク。ウェディング・ソング、ポーランド・ユダヤの伝承舞踊曲、エレジー、プロテスト・ソング他とレパートリーは多彩。中世のフィーリングをたたえつつ、東欧~スラヴのフォーク・ヴォーカルの味もあわせもっています。ヨーロッパのトラッド・ファンだけでなく、古楽を愛するファン、エスニック音楽を愛するファン、さらにプログレを愛するファンにもアピールする音楽。TOWERに並んでいました。 <quick review> ![]() ■ロシア:ボリス・グレベンシチコフ率いる「アクアリウム」が新アルバム『ПЕСНИ РЫбАКА』(CD Land Records CDLR 0320CD)発表。曲はいつものボリス調ですが、アレンジがとってもインド調の曲が目立ってます。インド的なものは前からさりげなく味付けに使っていましたが、今回はヴァイオリンの旋律、タブラの音、バンスリ風のシンセサイザー、それからシタールを使っているのかどうかわかりませんがそれらしい音と、かなり濃厚。ジャケのボリスの姿からはあんまり想像できないでしょう? ![]() ![]() ![]() ■ハンガリー:ハンガリーのツィンバロム奏者の中で屈指の一人であるカールマーン・バログの新譜『Aroma』の日本版が発売(アオラ・コーポレーション BNSCD-877)。バログのルーツはロマですが、多彩な音楽性をもち、フォーク・グループ、クラシック楽団からしばしば声がかかり、ジャズ的な演奏も上手く、バルカン音楽にも造詣の深いバログの魅力を堪能できます。横井雅子さんによる詳しいライナーノーツ付きというのもありがたいです。 [ゲスト・レヴューアー] ![]() VLADIMIR TARASOV『Sound Games of Vladimir Tarasov』PALASE EDITIONS,CD,Jazz/Sound Art(ロシア/リトアニア/USA)2003年発売(The State Russian Museum) (抄)サンクト・ペテルブルグ建都300年を記念して国立ロシア美術館で2003年3月に開催された「ウラジーミル・タラーソフのサウンド・ゲーム」展で販売されたCD。タラーソフのヴィジュアル・アーティストとしての作品の音の部分だけのベスト・セレクション。 ![]() 北里義之氏 MAKAM ENSEMBLE『Cafe Babel』Fono FA-029-2,CD,Folk(ハンガリー)1997年録音 (抄)ハンガリーの室内楽的アンサンブル“マカーム”(1984年結成)が、ジャズ界からイシュトヴァーン・グレンチョーを迎えて、本格的なジャズに取り組んだ異色作。 ![]() (抄)マカームとイレーン・ロヴァースの出会い。クルリクの作曲のセンスがいかんなく発揮されたオリジナル曲集。アラブやアジアの奥深さを抱えた曲はどれも魅力的で、トラッド歌手というにはあまりに蠱惑的なロヴァースの声が、シンドバッドの冒険譚を歌った曲に、神秘的な雰囲気を与えている。 ▲
by jazzbratblog
| 2018-10-28 09:37
| Jazz Brat(マガジン)抄録
今日も「Jazz Brat」(2002年3月創刊)のミニコミ誌から、拙著のディスク・レヴューを引っ張り出した。今回は第3号掲載分(2003年6月)だ。 ![]() その前に、第3号の目次を記したい。
特集 東欧スラヴのジャズ・ピアノ探訪vol.2:ソ連/ロシア編Part 1:目次
p.1~18:ソ連/ロシア編のピニアストPart 1:アザリアン、アバリアウス、アルペリン、イワノフ、ヴィレンスキー、ヴィンツケヴィッチ、オクニ、ガザロフ、ガネーリン、カプースチン、カルタリヤン、クシュニール、クズネツォフ、クラメル、クリョーヒン、コンコヴァ、コンダコフ、ザモロコ/岡島豊樹 p.19~24:インタヴュー セルゲイ・レートフ ソ連~ロシア前衛アート・シーンの20年を語る p.24~27:連載 セルゲイ・クリョーヒンと1980~90年代の前衛音楽/鈴木正美著 p.28~29 ディスク・レヴュー 【第3号Disc Review】all text by Toyoki Okajima ![]() ●personnel:Vagif Mustafa Zadeh (pian, organ)& others ●tracks:1.Aman Ovcu, 2.Dusunca 3.Zibeyda, 4.Bayati Siraz, 5.Ay Peri, 6.Qizil uzuk, 7.Melodiya, 8.Aziza, 9.Fantaziya, 10.Galmadi, 11.Improvizasiya ついに出ました、ヴァギフ・ムスタファ=ザデのCDです。ヴァギフはソ連時代に活躍した天才級のジャズ・ピアニストですが、1979年に若死にしました。没後25周年です(発行年2003現在)。何枚か組みのCDセットの発売も計画されているときいています。ヴァギフは、出身地アゼルバイジャンのフォークの特徴を生かしたオリエンタル・タッチのジャズがトレードマークですが、オリエンタル色のない演奏も絶品です。このCDは両方を含めてうまくバランスをとっています。「ファンタジア」になると、魔法の絨毯に乗ってカフカス~バルカン~地中海~スペインを旅するような気分に浸ってしまう、まさにファンタジックなジャズ。ちなみに「アジザ」は娘さんの名前で、彼女もすばらしいジャズ・ピアノ。
![]() SZAKCSI-KOSZEGI DUO『JOURNEY IN TIME』Fon Trade,CD,ジャズ(ハンガリー)CD ●personnel:Bela Szakcsi Lakatos (piano), Imre Koszegi (drums) + guest: Jackie Orszaczky (vocal, on 3&6) ●tracks: 1.Roots In Hungary, 2.Flying, 3.Sweet Song, 4.Journey In Time, 5.Blues For Two, 6.Apologies, 7.Happy New Orleans 前号で紹介したハンガリーのサチ・ラーカトシュをもっと聴きたくて、横井雅子さんに御相談申し上げたところ、当地へ行かれた際に入手してきてくださったCDです。フォーク味のする素敵なオリジナル・メロディを多彩に変奏する「ルーツ・イン・ハンガリー」、切れ味鋭い快速演奏によるビバップ的演奏の「フライング」、ゴスペルとスイングをミックスした「ハッピー・ニューオリンズ」、ヴォーカル入りトラック、と個々に趣向を楽しませてくれますが、圧巻は「ジャーニー・イン・タイム」。18分を超える演奏で、エキサイティングなリズムの饗宴とその対極のリリカル美という大きな振幅の中で、ジャズ、ブルース、ゴスペル、フォークが溶け合うというふうに、サチの多彩な魅力がきらめいています。 ![]() FERENC SNETBERGER『OBSESSION』Enja/Tip Toe TIP-8888342,CD,ジャズ(ハンガリー)1997年録音 ●personnel:Ferenc Snetberger (accoustic guitar), Janos Egri (bass), Elemer Balazs (drums) + guest: Irene Lovasz (vocal, on 10) ●tracks: 1. Wanton Spirit, 2.E-Bossa, 3.Szivaravany, 4.Fs Five, 5.Gypsy, 6.Hanging Out, 7.Obsession, 8.I Remember, 9.Song To The East, 10.Pava 上記と同様のいきさつで入手。フェレンツ・シュネートベルガーは今ハンガリーで大変な人気だそうです。1と2はブラジル音楽系、3はカリブ海系、4はジャズ・スイング、そして5でやや趣を変え、ジプシー調になりますが、哀愁情緒纏綿たるものではなくてサンバタッチを添えてあるところがフレッシュ。9になるとインド音楽調ジャズ・サンバというべきか、なかなか面白い趣向。6は南欧情緒とモダン・ジャズがブレンドした曲で、シュネートベルガーは現代ジャズのトレンドを吸収している人だということがよくわかります。超絶的な速弾きもできる人の様子ですが、そこはさらりと示すだけで、歌心を保ったジャズ・インプロヴィゼーションということを第一に考えている様子。 ![]() ●personnel:Akosh Szelebnyi (tenor sax, soprano sax, metal clarinet, vocal), Joe Coherty (violin, alto sax, bass clarinet), Bernard Malandain (bass), Philippe Foch (drums, percussion), Mokhtar Choumane (ney flute),Nicolas Guillemet (soprano sax, alto sax) ●tracks:1.Alkalom, 2.Mandala, 3.Patak, 4.Arniak, 5.Harmat, 6.Arviz, 7.Alkony アコッシュ・セレブニーは1966年ハンガリー生まれで、現在フランス在住のサックス奏者。アルバート・アイラーにシビレてます風だけど欧米ジャズ・トレンド信仰をほとんど感じさせない演奏に惹かれて以来、この人のCDを買い続けています。絶妙なピッチのコントロールによる綾のあるトーン、激情と詩情がないまぜになったフレーズは相変わらずこの新作CDでも魅力の焦点。今回は、他にサックス奏者を迎え綾を深めています。またドクドクドクドクドクと図太く脈打つリズムに乗り、数小節にまたがって大きくスイングする演奏も印象的で、そこは浅野廣太郎氏が贔屓にしているミハーイ・ドレシュの作風にけっこう近いかな。曲によりネイ奏者を迎えオリエントへの眼差しを示しています。 ![]() ●personnel:Larisa Dolina (vocal) with Igor Butman (tenor sax)'s Jazz Orchestra ●tracks:CD-1;01.Hello Dolly, 02.Putting On The Rits, 03.Satin Dolll, 04.Nice Work If You Can Get It, 05.Bye Bye Blackbird, 06.Don't Get Around Much Anymore, 07.God Bless The Child, 08.My Funny Valentine, 09.Lush Life, 10.You Are My Good Old Wagon, 11.Reverend Lee / CD-2;1.Get Back, 2.Oh Darling, 3.Masquerade, 4.Everuthing Happens To Me, 5.Night And Day, 6.Georgia On My Mind, etc.(total 21 tracks) ラリサ・ドーリナは、エリイツィンが大統領時代に褒めちぎった歌手だとか、レイ・チャールスとクレムリンで共演したとか、有名なジャズ映画で歌ったとかと、派手な話題に包まれている歌手ですが、際物扱いはダメよ。栄えある賞を総ナメしてきたポップ系歌手で、大変な歌唱力とエンターテイナー精神をもった名歌手です。いわばロシア版ライザ・ミネリ。いや、それ以上の器用さがあるかもしれません。メロディのフェイクもかなりいけて、ジャズ・センスもたっぷり。この2CDセットは彼女が英語だけで歌ったライヴ盤。スタンダードありポップスあり懐メロあり。今やロシア・ジャズ界の大看板のイーゴリ・ブートマン(サックス)が率いるビッグバンドがバックアップ。アメリカン・スタイルのオーソドック&ゴーシャスなアレンジです。 ![]() LEONID UTESOV『PORTRAIT ; THE BEST』Kominform Center KIC-R 00007,CD,ジャズ他(旧ソ連)1933~46、79年録音 ●personnel:Leonid Utesov (vocal,violin,etc) & his orchestra, Valerija Utesova(vocal) ●tracks:1.A Jazz Fan, 2.By The Samour, 3.The Heart, 4.March From The Movie Of "Cheerful Guys", 5.Everything Is Right,My Beautiful Marauise, 6.The Sea Is Spreaded Out, 7.Mu Mu, 8.The Portrait, 9.Steamship, 10.Uncle Elya, 11.Find If You Love, 12.Pair Of Bays, 13.Mishka From Odessa, 14.baron Von Der Pshik, 15.Bombers, 16.Chance Of Love, 17.The Song Of An Old Cabby, 18.The Moon Rhapsody, 19. Near The Black Sea, etc.(all 23 tracks) 前号で鈴木正美氏の紹介があったレオニード・ウチョーソフ(1885年ウクライナのオデッサ出身、1982年死去)のベスト盤。ウチーソフはソ連にあって大人気を博したジャズ・スター。オデッサの港には今ウチョーソフの立派な像が立っているそうだし、ウチョーソフ号なんていう名の豪華客船もあるとか。これは30年代~40年代の録音が主体。有名な「ジャズ・ファン」がオープニング・ナンバーで、これはクレズマー+タンゴ+スイング。他に、ジプシー・ジャズ、ワルツ・ジャズといった曲も多いです。オペレッタ系のエンターテイナー出身だけあって大袈裟なそぶりの歌いかたが多いウチョーソフだけど、それがレトロな味となって興をそそるんですよ。哀愁ナンバーが多い。 ![]() ●personnel:梅津和時(clarinet,alto saz, soprano sax), 多田葉子 (alto sax, soprano sax), 関島岳郎 (tuba), 張紅陽 (accordion), 松井亜由実 (violin), 新井田耕造 (drums) ●tracks:1.重陽, 2.Cigany Himnusz(ジプシー賛歌), 3.コンノートのくつみがき, 4.Ballet Dancer, 5.うっ!ちゃんだ, 6.月光千金 (Get Out And Get Under The Moon), 7.グレートさんのローマンス, 8.IZUMOYA, 9.海を渡る風, 10.Burkan Cece 2001年マケドニアのジプシー歌手エスマが初来日したとき、渋谷でオープニング・アクトを務めたのがこの「こまっちゃクレズマ」でした。梅津和時さんの吹くクラリネットが哀愁情緒をくすぐり、チューバ、アコーディオンといった楽器がストリート・フィーリングを添えていて、続くエスマのステージにすんなり入って行けたのでした。このCDは「こまっちゃクレズマ」の新作です。このグループはユダヤ音楽だけでなくて、ジプシー音楽や、広くバルカン音楽を愛する人達の集まりなのでしょう。岡惚れではなくて、愛憎ともに意識しながら演奏しないでいられないといった、深い愛着を感じさせる音楽です。私は、4曲目、5曲目、8曲目、10曲目を特に愛します。 以上
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by jazzbratblog
| 2018-10-20 23:21
| Jazz Brat(マガジン)抄録
今日は、「Jazz Brat」(2002年3月創刊)のミニコミ誌の第2号から、拙著のディスク・レヴューを引っ張り出した。 ![]() 第2号(2003年2月)は、東欧のジャズ・ピアニストの紹介を国別にしてみた。全体の内容をリストアップしておくと: ●表紙:中欧・東欧のジャズ・ピアニストたちの写真;クシシュトフ・コメダ、カールマン・オラー、ヤンチー・ケロッシー、ボヤン・ジュルフィカルパシッチ、レスワフ・モジュジェル、ミルチョ・レヴィエフ [特集:東欧~スラヴのジャズ・ピアノ探訪vol.1] ●p1~3:プレリュード;東欧~スラヴのジャズ・ピアノへようこそ(拙著) ●p4~18:お国巡り名盤探訪 Part 1 ●p3~6 旧ユーゴスラヴィア連邦 feat. ボラ・ロコヴィッチ、ボヤン・Z ●p7~8 ルーマニア feat.ヤンチー・ケロッシー、ミルセア・ティベリアン ●p9~10 ブルガリアfeat.ミルチョ・レビエフ、マリオ・スタンチェフ ●p11~14 ポーランドfeat.クシシュトフ・コメダ、マルチン・ヴァシレフスキ、レスワフ・モジュジェル ●p15~17 ハンガリーfeat.ジェルジュ・サバドシュ、ベーラ・サチ・ラーカトシュ、ソルト・カルトネッカー、カールマン・オラー ●p18 旧チェコスロヴァキアfeat.エミル・ヴィクリツキー、カレル・ルージチカ ●p19~20 [review: Spotlight]新譜愛聴記 ソルトネッカー『ワンダーラスト』2曲目。鳴った瞬間、これは大変だと感じた。いい曲じゃないか。(山本 隆著) ★他でもない、「JAZZ PERSPECTIVE」誌の編集長に一筆いただきました。 ● p21~27 連載 セルゲイ・クリョーヒンと1980-90年代の前衛音楽 第1回(鈴木正美著) ★本号から始まった鈴木正美氏の連載。その後第4号までつづきました。誠に充実した内容であり、今もたびたび読み返しています。 ●p28 review2: theatre セルゲイ・レートフがタガンカ劇場に参加して来日しました。歌あり踊りありのミュージカル「マラー/サド」観劇(感激)記(拙著) ●p29~34 DISC REVIEWS (全24タイトル)(評者:鈴木正美、浅野廣太郎、拙著) 【Jazz Brat第2号(2003年2月発行)掲載のディスク・レヴュー抄録】 all texts by Toyoki Okajima ![]() Anatoly Vapirov『Magic Water』AVA Records 0008,CD,ロシア&ブルガリア1997年実況録音 ●personnel:Anatoly Vapirov (soprano sax), Yury Parfionov (trumpet, flugelhorn),Yuri Kuznetsov (piano), Vladimir Volkov (bass), Stoyan Yankoulov (tupan, percussion) ●tracks:(1) ~ (5) Magic Water アナトーリ・ヴァピロフはソ連のトップ・ジャズマンの1人として著名だが、80年代末にブルガリアに移住し、避暑地として著名なヴァルナに暮らしている。ブルガリア伝統フォーク音楽の大物テオドシー・スパソフ(カヴァル奏者)とも組み、バルカン的な要素とジャズの交配による音楽にも熱心に取り組んでいて、彼らが組んだトリオによる『A Fairy-Tale』(Marko's)という名盤があるが、このディスクでもその系統のジャズが満喫できる。つまり、トルコの影響を受けたバルカン~スラヴ音楽という理解をもとに、地中海という視点も重視した音楽であり、オリエンタル~アラブ色の香りも立ちこめる(ヴァピロフのオリジナル曲集)。軽やかにクイック・ステップで踊るようなヴァピロフのサックスは逸品。 ![]() Vilnius Jazz Quartet『Vilnius Jazz Quartet featuring Neda』DM-80023 J25,CD,リトアニア1997年録音 ●personnel:Neda Malunaviehute (vocal,flute), Vytautas Labutis (saxes, synthsizer), Oleg Molokojedov (piano,keyboards,trumpet),Leonid Shinkarenko (bass), Gediminas Laurinavichus (drums, percussion) ●tracks:(1) I'm Beginning (2) Nadoeda (3) Drum 'n' Dream (4) Rimsky (5) Two Themes For The Movies: Isabel & Blues (6) Tuxedo Junction (7) Valentina (8) Tenoristika (9) Raga I-IV ヴィリニュス・ジャズ・カルテットは、バルトのリトアニアの首都ヴィリニュスを拠点に活躍しているジャズ界トップ・クラスが顔を揃えたグループ。ヴィリニュスといえば、ソ連時代にこの街で活躍したアヴァンギャルド・ジャズのガネーリン・トリオでおなじみだろう。これは同トリオが育てた弟子世代の代表格のグループだ。このアルバムでは、USAスタイルを踏襲したしっとりした歌入り演奏がしばらく続く。わお! 皆んなこんなことも上手にやれたのかと感心しながら聴き惚れ、最後の長尺の(9)で私は決定的に溜飲を下げた。待ってました。これこれ! 憂愁美に富んだ旋律を幾通りにも彩りながら徐々に盛り上げて行って、結果的に熱いものを残してくれる演出に痺れてしまった。 ![]() Modern Jazz Septet『The Days Of Default』DM-80061 J27,CD,ロシア1998年録音 ●personnel:Andrei Lobabov (trumpet), Oleg Golyunov (trombone), Andrei Turygin (alto sax), Vladimir Timofeev (tenor sax), Igor Dmitriev(piano), Dmitry Averchenkov (bass), Mikhail Belyaev(drums), Sergei Belichenko*(drums) ●tracks:(1) The Eternal Triangle (2) Uranius (3) Messenger (4) Open, Sesame! (5) Dialogue USAのジャズ・ドラマー、アート・ブレイキー(故人)が率いていた著名グループ「ジャズ・メッセンジャーズ」をご存知ですか? このモダン・ジャズ・セプテットの演奏は、まさにそれです。ロシア云々ではないところで勝負をかけている演奏です。ティナ・ブルックス作曲の「開け、ゴマ!」のロシア人による演奏はこれで初めて聴きましたが、かなり良い線行っています。(3)と(5)はロシア人トランペッターのヴァレリー・ポノマレフの曲です。彼はジャズ・メッセンジャーズの正規メンバーとして活躍したことがある人で、現在ニューヨークにロシア人ジャズ・コネクションが築かれているのは彼の功績です。ロシア人に正攻法モダンジャズができるのかと半信半疑な人に聴いて欲しい! ![]() Lembit Saarsalu & Leonid Vintskevich『Peak Performance』Landy Star LS 035-01 J22,CD,エストニア&ロシア2001年録音 ●personnel:Lembit Saarsalu (tenor sax),Leonid Vintskevich (piano) duo ●tracks:(1) Take Me Your Love (2) I Had Only You (3) I Will Miss You (4) Oh, Here's To You (5) Where's That Man (6) Who Cares (7) I Found You Now エストニアの名テナー・サックス奏者レンビット・サールサルと、ロシアの名ピアニストのレオニード・ヴィンツケヴィッチの2重奏によるバラード集です。ややこしい名前ですって? まだそんなこと言う? 2人ともソ連時代からトップ・ジャズマンとして、その評判に恥じない演奏を続けてきた人です...この言い方も悪いか...。過去をゴリ押ししちゃいかんですね。レンビットのテナーはデリカシー溢れる節回しと熟成のトーンが良い味です。レオニードは時にそれを引き立てる隠し味となり、時にヴェルヴェット・タッチの響きや、澄み切った夜の星群のようなきらめきを添えます。1曲1曲にドラマが描かれます。叙情詩、散文詩、幻想詩他、多彩な手法を楽しませる詩集のようでもあります。 ![]() ●personnel:Brad Shepik (guitar), Chris Speed (clarinet), Skuli Sverrisson (bass, el-bass), Jim Black (drums, percussion) ●tracks:(1) Romanics (2) Bushka Lounge (3) Klink (4) Snap (5) Push (6) Howl (7) Drifting (8) Little Theater (9) Nyla (10) Rider (11) Silencio (12) Mexahata Pachoraは、ギター奏者のブラッド・シェピックがリーダー格のUSAのグループだが、彼はデイヴ・ダグラスという素晴らしいトランペッターと組んだグループ「タイニー・ベル・トリオ」で俄然注目された頃から東欧~スラヴのフォーク音楽にそうとう愛を注いでいるという様子だった。Pachoraではバルカン、アラブの音楽への賛歌というべき曲をたびたびフィーチュアしてきたが、今回は全面的にそうした賛歌を繰り広げている。いわゆる変拍子曲を演奏しても、軽快な舞踊ステップ調で体をまるごとリードしてくれるのがうれしい。そのショウケースが10曲目で、イベリア、マグレブ、地中海、小アジア、バルカンン、そしてパキスタンを逍遥する音楽で、シェピックの興味の対象がはっきり確認できる。 ![]() Savina Yanantou & Primavera en Salonico『Terra Nostra』ECM 1856 / 067 172-2,CD,ギリシャ2001年録音,フォーク音楽 ● Savina Yanatou (vocal), Lamia Bediouli (vocal) with Primavera en Salonico ●tracks:(1) With The Moon I'm Walking (2) Ivan Nadonka Dumashe (3) A Fairy's Love Song (4) Ballo Sardo (5) Yiallah Tnem Rima (6) El Barquero (7) No Seas Capritchioza (8) Chant Des Belles Meres (9) Schubho Lhaw Qolo (10) I've Told You And I Say Again (11) Tres Hermanicas Eran (12) Los Bilbilicos (13) Hey Het (14) Ah Mon Die (15) Close Your Eyelids And See (16) Adieu Paure Carnavas (17) Wa Habibi (18) Madonna De La Grazia (19) Kadife (20) Jaco ギリシャのフォーク界の至宝と言うべきサヴィーナ・ヤナトウの新作がドイツのECMから登場。サヴィーナといえば、テッサロニキに伝わるスペイン系ユダヤ人(セファルディ)のトラッド集、世界の聖母マリア頌歌集他、学究的姿勢にもとづく丁寧かつ刺激的内容のアルバムが著名だが、この新作はそのダイジェスト的レパートリーによるコンサートの実況録音盤。無垢の権化のような声、インテリジェンスの権化のような冷静沈着な声、祈りの声、シャーマニックな声等々、幾通りもの表情を持ち合わせている。ここではベルベルの悲鳴のような声による即興演奏も素晴らしい。彼女をバックアップするグループ「テッサロニキの春」は、『サロニカの春』(Lyra)プロジェクトのときのミュージシャンがレギュラー・ユニット化したコンボだが、いわゆる観光土産的ステレオタイプの演奏とは一線を画した、そうとう優れたグループと言えるだろう。 ![]() New Arts Ensemble『Unbearable Lightness Of Being』Long Arms CDLA 02050,CD,ロシア2002年発売,フォーク/ミニマル/即興音楽他 ●personnel:Lev Gutvsky (vocal,electronics),Olga Leonova (vocal),Sergey Belov (trombone, electronics) ●tracks:(1) Short Happiness Of The Women (2) 84 Selected Harmonies Of Morton Feldman (3) Long Song (4) Olga's True Soul (5) White Cocain Angel (6) Frigid (Cool) Star (7) Dreams Of Love (8) Small Man's Life (9 ) Ave Maria (10) Crystal Stomack Of The Angel (11) -(19) Unbearable Lightness Of Being クリョーヒンのCDで始まったロング・アームズ・レーベルは、その後、ディープな伝統と,先鋭的な前衛という対極を結び付けた音楽のCDをぞくぞくと出している。上記の「ニェチェ」もその一例だが、このニュー・アーツ・アンサンブルによる『存在の耐えられない軽さ』がその系統の新作。オルガ・レノーヴァのスラヴ系の地声、ベルカント、シャーマニックなヴォイス他、多彩な表情を自在に交錯させるヴォイス・パフォーマンスを軸に、エレクトロニクスを絡めた演奏だ。古いフォークロア、ペルト、ウェーベルン、モートン・フェルドマン、さらにビートルズの引用も織りまぜるが、コラージュ手法ではない。多彩なヴォイスにより架空の映画を幻視させるオーディオ・ドラマ風音楽と言えるだろう。 ![]() Valentina Ponomareva : The Russian Gypsy Queen『Ochi Chiornye』ARC EUCD 1656,CD,ロシア2000年録音,ジプシー・ロマンス ●personnel:Valentina Ponomareva (vocal, percussion), Oleg Ponomarev (violin, guitar,vocal), Sergey Vorontsov (guitar), Konstantin Gogunskiy (guitar) ●tracks:(1) Black Eyes (2) Move Away, Don't Look At Me (3) Two Guitars (4) Only Once In Your Life (5) He Goes Away (6) Where Is She (7) The Da Soon (8) Travelling Violin Players (9) Wicker Gate (10) A Game Of Love (11) The Tent (12) Don't Leave Me (13) No, He Did Not Love Me (14) Russian Gypsy Melody, etc.(all 20 tracks) 「ロシアのジプシー・クイーン」というキャッチに偽りも誇張も無い、ヴァレンチナ・ポノマリョーヴァである。名高い「ロマン・モスクワ・ジプシー・シアター」の花形として、TV、ラジオ、録音でも大活躍。彼女が1989年にクリョーヒン、チェカーシン、タラーソフらと連れ立って来日した(ジョン・ゾーン、ビル・ラズウェル他とも共演した「開かれた地平」コンサート)ときの魔術的なムードのソロに僕は呪文をかけられて、彼女の歌声なしでは生きて行けない。ジャズ、ロック、即興音楽も彼女はやってきたけど、ここではロシア・ジプシー・ロマンスに徹している。「黒い瞳」をはじめとするバラード名曲の宝庫。哀切感の権化というべき歌に一度触れたが最後、僕の二の舞いだけど、覚悟はよろしい? ![]() V.A.『Russian Gypsy Soul』Network 36.989,2CD,ロシア,ジプシー音楽 ●personnel:Loyko, Siberian Gypsies, Ponomareva & Trio, Arbat, Lyliya Erdenko, Galina Erdenko & Jelem, ILO, Sergei Erdenko, Nikolai Erdenko & Jung, & others ●tracks:Disc-1 : (1) Loyko (2) Bog Nikola Ne Dopustit, Sberezhot (3) Shuryaki (4) Mityshka Rossya (5) Martovsky Horovod (6) Yegorushka (7) Bogu Pomolitsya (8) Pavlina Krylya (9) Holodny Veter (10) Gulya, etc. (all 37 tracks) ネットワーク社は美麗写真満載の充実ライナー(英・独・仏語)付デジパックの2枚組でとんでもなく素晴らしいコンピを作るけど、このセットは中でも最高級だと僕は思う。天才ヴァイオリン奏者セルゲイ・エルデンコ、彼のトリオで超人気の「ロイコ」、「イロ」「アルバト」といったグループ、シベリア・ジプシー、上記のポノマリョーヴァ他、若手からベテランまでロシア・ジプシーの現役最高の歌手、ヴァイオリン奏者、ギター奏者を盛り込み、大半が初CD化の音源。こんな素晴らしい形でロシア・ジプシーの音楽がガイドされたのはこれが初めてだと思う。レパートリーは、トルストイの時代に遡るものから現代ものまで多彩。憂愁、悲哀、恋慕、別離の表現がとことん深まった大充実アルバム。 ![]() V.A.『Balkan Musical Archive Volume 1 : The Roma in Serbia』Etonika CDETN 001,CD,セルビア1978~2000年録音,ジプシー音楽 ●tracks/Personnel:(1)Cariama (2)Dostano (3) Bugar Gajde/all by Javan Mrinkovic (violin), Cedmir Petovic (tambourine), Aleksandar Vasic (bass) (4) What Good Is Surchala to You? (5) Sleep, My Son/both by Zorka Mitrovic (6) Palegra/Milos Sisic (violin) (7) Moravac / Milorad Petrovic-Grba (violin) (8) Levakinja (9) Dodla Prays to God / Dusan Todorovic(accodion) (10) This Wealthy House / Angelina Dordevic(vocal), Dragisa Dordevic (violin), Zorka Miltrovic (exclamationn) (11) This Wealthy House / Zorka Miltrovic (vocal), Javanka Radosavljevic (exclamation), Zora radosavljevic (accordion) / etc.(all 29 tracks) バルカンのセルビアにおいて1978年から2000年にかけてフィールド録音されたセルビア各地のジプシー(ロマ)の演奏・歌唱集。1916年生まれを最年長に、20年代、30年代生まれの演者が多く、現代の若者の演奏も少々含まれている。今やジプシー音楽はけっこう人気があるようだけど、このディスクでは、放送やレコード界と縁遠く暮らして来たような部類の人々が伝承して来た、バルカン・ジプシーのディープな音と声が集められている。華麗・妖艶・悩殺といった派手なイメージのものは無い代わりに、いわゆる訛りだらけのジプシー音楽に浸ることができるものは、実は今や少ない。ライナーノーツ(セルヴォクロアチア語、スロヴェニア語、英語、独語対訳)も充実していて嬉しい。 ![]() NETE『Suffering』Long Arms CDLA 02036,CD,ロシア2001年録音,フォーク&ジャズ ●personnel:Lena Sergeeva (vocal,percussion),Sergey Zhirkov (vocal, balalaika, Vladimir's horn, Kurk duduka, Belgorod's kalyula, guitar,etc.), Ed Sivkoy (saxes, effects, percussion), Misha Yudenich (drums) ●tracks:(1) Pangolin (2) Glen (3) Tatars 4) Sisters (5) Seventh Day (6) Peacock (7) Road Song (8) Byes (9) Rain (10) Talekha (11) 47th Month (12) To The Matins, Brothers (13) Lament (14) Princess (15) Sparkle (16) Steed (17) Suffering 「ニェチェ」は、ロシアや周辺のスラヴ地域の古いフォークロア音楽や叙事歌他を主要な題材にとして、ジャズ的な即興演奏やミニマル音楽他の方法も取り入れた音楽(人呼んでアヴァンフォーク)を続けているロシアのグループ。ロシア・フォークロア音楽の楽団として世界的に著名なディミトリイ・ポクロフスキー・アンサンブルのメンバーだったレーナ・セルギーヴァ(ヴォーカル)とセルゲイ・ジルコフ(ヴォーカル、民族楽器)が独立して結成した。演奏中に生じた直観や、エモーションを押さえ込まずにパフォーマンスに反映させることによって、「伝統的作法」の名で封印されてきたものを解き放つ音楽である。アレクセイ・アイギ(ヴァイオリン)らの「アンサンブル4:33」他との共演作(1997年/Long Arms CDLA 9706)も逸品。 ![]() Sofia Gubaidulina (compositions)『Sofia Gubaidulina』ECM New Series 1775,CD,2001年録音,現代クラシック ●personnel:Elsbeth Moseer (Bayan), Boris Pergamenschikow (violoncello), Munchener Kammerorchestra, Christoph Poppen (conducting) ●tracks:(1)~(7) Seven Words (8)~(17) Ten Preludes (18) De Profundis ソフィア・グヴァイドゥーリナ(タタール出身、カザンの音楽院を経てモスクワ音楽院で学んだ)が不遇をかこった時代に残した名作、バヤン(アコーディオン)とチェロと弦楽のための「最後の七つの言葉」(1982年)、チェロ独奏のための「10のプレリュード」(1974年)、バヤン独奏のための「深淵にて」(1978年)の3曲を入れたアルバム。ペルトとカンチェリに絶大な評価を捧げるドイツのレコード会社ECMの制作・発売。寡黙、沈黙の中に突如吹き出す光の乱射や情念の奔流。つたない言葉だが、私は彼女の音楽をそうたとえたい。無視・疎外される状況にあって、自由な精神の活性化を怠らなかったソ連時代の「異端芸術家」の内部を覗いたような気持ちになり、襟を正してしまった。 ![]() The Male Choir of the "Valaam" Institute for Choral Art / Igor Ushakov『God, Grant Us Patiencd...: A Dedication to the Family of Nicholas II』IMLab IMLCD 040,CD,ロシア1996年録音,宗教音楽/クラシック ●personnel:The Male Choir of the "Valaam" Institute for Choral Art directed by Igor Ushakov ●tracks:(1) The Lord's Prayer (2) Collection of Judea (3) When Thee, Our martyred Tsar (4) Was, Martyred Tsar Nicholas, Lead to Thy Death Like a Gentle Lamb (5) Prince Alexei, Holy martyr, Love the Strength of the Cross (6) True Glory is in Suffering (7) These Sacred Regal Martyred Woman of Creed / etc.(all 29 tracks) ラフマニノフがロシア正教の典礼の作法にのっとって作曲した合唱曲『徹夜祷(Vespers)』を愛聴しておられる方々には感涙を禁じ得ないディスクではないかと思います。ジャケ写真の中の方々、つまりロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世とその一家に捧げるべく編纂された合唱曲集とのことです。詳しいことはわかないけど、僧職作曲家による伝統作法の曲を中心に、グラズノフのような芸術音楽作曲家が宗教曲として作った曲もまじえた内容とのことです。 ![]() ●personnel:Marina Kapuro (vocal) with musicians ●tracks:野原は野原/アビは飛んで行った/部屋で/村/夕べの鐘/トロイカ/ハッピー・ニュー・イヤー, etc.(all 15 tracks) マリーナ・カプーラはロシアのフォークやポップスを愛する人には説明無用の人気歌手。澄み切った高音、しなやかに伸びる声、ジャケの通りの美貌。僕が初めて彼女の声を聴いたのはセルゲイ・クリョーヒンの傑作『Sparrow Oratorium : Four Seasons』だった。セルゲイが雀語を人間の発生器官用に翻訳した歌詞を清らかに歌う彼女に連れられて、天空を舞う気分に浸った。彼女の歌声を生で聴くまではこの世とおさらばしたくないぞ、おれは。そんなマリーナのベスト・セレクションがこのディスク。スラヴ色が鮮明な曲はほとんどないが、バラードを歌い込む時のフレーズからやっぱりスラヴをほのかに感じる。個別アルバムでは『Nebesa』(2000年)、『Yabloko』(1997)が入手容易。 ![]() Tamara Gverutsiteri『Zvezdi』CD-023-1,CD,ロシア2000年発売,ポップス他 ●personnel:Tamara Tamara Gverutsiteri(vocal) with musicians ●tracks:わが愛するピアフ/女への捧げの/ 王様万歳/やきもち焼かなで/ 蝶々さん/エルサレム/ママの瞳/もっと強く愛して/ノスタルジア/グルジア/ etc.(all 12 tracks) 神田神保町の新世界レコードで現物を見て即決して買いました。タマーラ・グヴェルツィテーリはグルジア出身の人気歌手とのことです。皆さんはどんな歌声を想像しますか? タマーラの声は熟した柿の味。中音域のねっとりした節回しの魅力にとろけ、それに加えて、ファルセットによる脳天直撃の高音のうねりに昇天します。しかも、地声でもそうとう高いところまで伸びるのですよ。やっぱりグルジアなんだなと感じます。曲はポップ系を中心に、フォーク調、ジプシー・ロマンス調も取り混ぜています。ブックレットに載っている簡単なディスコグラフィによると、1991年LP『Belaya』、1994年CD『Vivat, Koroli!』、1995年LP『Spasibo, Muzika, Tebe』があります。 ![]() ●personnel:Goran Bregovic (sompisition, arrangement) with Gypsy orchestra, strings, choir, solists: Saban Bajramovi, Vaska Jankovic, Zdravo Colic, Goran Demirovic (vocal) & others ●tracks:(1) Hop Hop Hop (2) Tale 1(grave disperato) (3) Aven Ivenda (4) Sex (5) Tale 2(adagio poco febrile) (6) Makki Maki (7) Tale 3(lento arabesco) (8) So Nevo Si (9) Tale 4(modarato melancoliso) (10) Cocktail Molotov (11) Tale 5(andante amoroso) (12) Polizia Moolto Arabbiata (13) Tale 6(adagio delicato) (14) Te Kuravle (15) Tale 7 (vivo con fuoco) クロアチア人の父とセルビア人の母の間でサラエヴォに生まれた作曲家ゴラン・ブレゴヴィッチの最新アルバム。世界中の支持を得た『ジプシーの時』『アンダーグラウンド』等の音楽の世界がここでも広がっている。これはコンサート・ツアーの賜物のようで、ブックレット掲載の写真から、ジプシー・ブラスバンド、ストリングス、ソロ歌手、合唱団、リズム・セクションを擁した大所帯の編成のツアーだったことがわかる。心に染み込む憂愁バルカン調バラード、ジプシー調エレジー、祝祭的なパレードや舞踊感覚のブラス楽器の躍動など、バルカン音楽の魅力をたっぷりパッケージしてある。(3)と(14)の歌声は、かつて「エデレジ」で鎮魂の名唱を聴かせてくれた彼女のものだろうか...。 ![]() v.a.『Russia / Emerging Sound: Bards and Balalaika』Rough Guides RGNET 1107,CD 充実したロシアのコンピレーション。ドスのきいた声による鋭い批評眼の詩でお馴染みのウラジーミル・ヴィソツキー、愛国的な詩と哀愁スラヴ旋律の調和で宗教的法悦へ誘うジャンナ・ビチェフスカヤ、ソ連時代には国民的歌手だったアーラ・プガチョワ、その昔スターリンが贔屓にしたという歌手クラウディア・シュリジェンコといった超有名な歌手たちに加えて、ジプシーの人気グループ「ロイコ」や「テレム」や、新世代ポップ・フォークのナタリア・ドゥドゥキナ他、多彩なレパートリー。お買得。 ![]() v.a.『Flammes du Coeur : Gypsy Queens』Network 32.843,2CD,ロマ(ジプシー)音楽 ネットワークはドイツのレコード会社で、民俗/民族音楽の充実したカタログを擁し、現在進行形で新しい発売を進めている立派な会社。2枚組デジパック仕様のシリーズにも定評があり、数々出しているが、ジプシー音楽の多様性を歌で味わえるありがたいディスクがこれ。ジプシー音楽は活路を見出すため、その土地、その街で親しまれている音楽を巧みにとり入れて、親しみとエキゾティシズムをセットにした混血音楽を作る能力を発揮しているといわれるが、それをこのディスクで確かめることができる。一昨年来日したバルカンの・ジプシー界の最高峰(表紙の女性)エスマ・レゼポーワをはじめ、マケドニア、ルーマニア、スペインのジプシー・クイーン6人が聴ける。 [鈴木正美氏評] Sergey Letov, Alexei Borisov, Dmitrii Aleksandrovich Prigov『Concert in O.G.I.』Petagrama 027 (brp)ロシア 1999年録音 ●Sergei Letov (saxphones,swanee whistle), Alexei Borisov (low-tech electronics), Dmitrii Aleksandrovich Prigov (texts, voice) [浅野廣太郎氏評] ・Szabados Trio『Elfelejtett Enekek (Fprgotten Songs)』Fono FA-012-1 (Adyton原盤) ハンガリー1996年発売 ●Szabados Gyorgy (piano,voice), Dresch Dudas Mihaly (reeds), Geroly Tamas Sandor (drums,percussion) ・Szabados Gyorgy『Az esemenyek titkos tortrnete』Fono FA-068-2 (2CD) ハンガリー1985年&1996年録音 ●CD-1: Kobzos Kiss Tamas(voice), Dresch Dudas Mihaly (flute,bass-clarinet), Vasko Zsolt(flute,bass-clarinet), Szabados Gyorgy(piano) // CD-2: Szabados Gyorgy (conduting,piano), Lorincz Janos (flute), Szemzo Tibor (flute,bass-flute), Dresch Dudas Mihaly (flute,soprano sax), Grencso Istvan (alto-flute,bass-clarinet, alto sax), Lakatos Antal (tenor sax), Kovacs Ferenc (trumpet), Mako Miklos (trumpet), Johannes Bauer (trombone), Zakar Zoltan (trombone), Binder Karoly (piano), Farago Antal (percussion), Balo Istvan (percussion), Geroly Tamas (percussion), Lantos Zoltan (violin), Trefas Istvan (violin), Hlacs Gusztav (violin), Virag Laszlo (violin),Kormendy Ferenc(viola), Jacobi Laszlo (cello), Benk Robert (bass), Lorinszky Attila (bass), Kiss Gabor(bass) ・Fulgerica & The Mahala Gypsies『その音に火をつけろ!』ビーンズ BNSCD-872,CD,ルーマニア 2002年12月発売 ●Fulgerica & The Mahala Gypsies ▲
by jazzbratblog
| 2018-10-03 00:35
| Jazz Brat(マガジン)抄録
むかし2002年に「Jazz Brat(ジャズブラート)」というミニコミ誌を不定期に出したことがある。B5判のコンビニ・コピー印刷、ホッチキス止めという簡易製作品だった。中欧、東欧、ロシアの主にジャズを熱心に聴いておられる人たちの情報交換メディアを作るのが目的だった。ディスクユニオン新宿ジャズ館さんに置いていただいた他は、口コミに頼った。以前から何かにつけてお世話になっていた鈴木正美氏(現在、新潟大学教授)、浅野廣太郎氏(バリトンサックス奏者)、笠井隆氏(ガッツ・プロダクション社長)のご執筆、ご支援をいただいて、3月に第1号を発行できた。全24頁。 ![]() ちなみに、第1号の内容をリストアップしておくと: 表紙:ヴャチェスラフ・ガイヴォロンキーとソルト・カルトネツカーの写真 p1〜2:ソルト・カルトツカー・インタヴュー(拙著) p5〜11:ヴャチェスラフ・ガイヴォロンスキー・インタヴュー(拙著):現在ウェブサイト「musicircus(musicircus.on.coocan.jp)内の「オデッサへの手紙」内で閲覧可能 p12:はじまったばかりの私のドレシュ愛(浅野廣太郎氏著) p13〜14:ドムの声たち:巻上公一&宝示戸亮二『方向はあっち』(Long Arms CD)(鈴木正氏美著) p15:ノット・トゥー・レコード:!隠れた名盤はこれだ! その1(笠井隆氏著) p16:コウモリとスズメ:レジツキーとクリョーヒンのこと(拙著) p17〜22:ディスク・レヴュー:下に挙げた拙著分の他に浅野廣太郎氏著の4作、Dresch Mihaly Quartet『Zeng A Lelek』『…Folyondar…』(Adyton/Fono、後者はビーンズ発売)、Dresch Mihaly Solo『Hus eg』(Fono)、Szabados Gyorge – Roscow Mitchell『Jelenes』(Fono)を含む 【Jazz Brat第1号掲載のディスク・レヴュー(2002年3月発行)】 all texts by Toyoki Okajima ![]() AVA Records 0007 (CD ジャズ) personnel: Anatoly Vapirov (soprano, tenor saxes), Yuri Kuznetsov (piano), 1997~98年実況録音 tracks: (1)~ (11) Bridge Over Sea アナトーリー・ヴァピロフは旧ソ連出身だが、現在ブルガリアのヴァルナ(黒海に面するリゾート地)で暮らし、同国のジャズ界の指導的存在となって貢献しつつ、広くヨーロッパを舞台に活躍している。90年代に入って自らAVA Recordsを設立しCD発売も続けており、その7作目がこのディスク。ウクライナのオデッサに住む名ピアニスト、ユーリ・クズネツォフとのデュオによるライヴである。哀愁のメロディから、スラヴ情緒に満ちた高揚したシークエンスへ、あるいはブルージーかつレイジーな語らいからアブストラクトな交響へ、あるいはまたユーモラスな戯れから耽美的抒情へ、と自在かつ多様に変容して行く即興演奏は実に魅力的。クズネツォフのバラード演奏は特筆すべき美しさ。 ![]() Solyd Records SLR 0309/10 (2CD ジャズ) Personnel: Anatoly Vapirov (tenor, alto&soprano saxes, clarinet, bass-clarinet), Sergey Kuryokhin (piano, prepared piano, percussion), Alexander Alexandrov (bassoon), Vladimir Volkov (bass), Ivars Galenieks (bass), Valentina Ponomareva (vocal), Sergey Belichenko (drums), Vladimir Grisschenko (electric bass), Tauno Saviauk (flute), 1978~81年録音 tracks: Disc-1: (1) ~ (3) Forgotton Rituals Part 1~3 (4) Albena Legend (5) Forgotton Ritual // Disc -2: (1) Sentenced to Silence (2) Image of Time (3) Invocation of Spirit (4) Invocation of Fire (5) Invoction of Water アナトーリー・ヴァピロフはかつてセルゲイ・クリョーヒンを擁したグループを組んでいた。クリョーヒンがジャズの演奏活動を本格化させるにあたってこのグループは大きなステップボードとなった。ヴァピロフは古今のジャズをがっちり把握し、スーパー・テクニックをもったマルチ・リード楽器奏者であるとともに、現代音楽にも精通し作曲も得意とした。この2枚組の1枚(Disc-2)はかつてLeoから発売された2作の共演LP『Invocations/Vapirov』『Sentenced to Silence/Vapirov & Kuryokhin』を収録したものだが、もう1枚は発掘された未発表音源。後者は、失われた古代の儀式をテーマにしたミステリアかつスラヴ調の曲集。メンバーのソロはどれも鋭く手応え満点。 ![]() 『Four Brothers』 Boheme CDBMR 809021(CD ジャズ) personnel: Igor Butman (tenor&soprano sax), Oleg Butman (drums), Michael Ivanov (piano), Andrey Ivanov (bass), 1999年録音 tracks: (1) Barynya (2) Waltz for Oksana (3)Otdavali Molodu (4) Nutville (5) Smoke Gets in Your Eyes (6) Cheek to Cheek ボヘームは総合ジャンルの会社ですが、ジャズに並々ならぬ情熱を注いでいます。ロシアの大物ないし若くても実力派をプッシュしています。このディスクの主役は現代ロシア・ジャズ界の誇る「ジャズ3兄弟」のうちの2組、ブートマン兄弟とイワノフ兄弟の合作。ブートマン兄(イーゴリ)はかつてUSAに渡り、グロヴァー・ワシントン・ジュニアのバック・バンドで重用されたり、パット・メセニーのツアー・バンドでも重宝がられたりしたサックスの名手(クリョーヒンの親友としてもお馴染み)。帰国後トップ・ジャズマンとして活躍しています。フュージョン系も上手いですけど、ストレートアヘッドなハードバップ系もばっちり。ここではリリカルなバラード(2)で歌心満点のソロもアピール。 ![]() Landy Star LS-025-01 (CD ジャズ) personnel: Michail Ivanov (piano), Andrey Ivanov (bass), Andrey Lobanov (trumpet), Alexey Nikolaev (tenor sax), Eduard Zizak (drums), 2000年録音 tracks: (1) Blues Olymp (2) Ballad (3) Broadway Bossa Nova (4) Waltz for Maria(sax & trumpet out) (5) Sambo for My Son (6) Through the Darkness これはイワノフ兄弟が主役を務めるアルバム。上記のBohemeにも兄弟はアルバムがありますが日本のお店でお目にかかりません。素晴らしいコンビなのに...。これはストレートアヘッドなジャズで、曲も、アレンジも、アドリブも良質、3拍子揃っています。欧米ジャズの耳功者でも目隠しテストすれば、ロシアとは思いつかないでしょう。そこが私は嬉しくもあり寂しくも感じて、旗色不鮮明。楽器が上手くて、バップを体得していないと立つ瀬が無い、というのが狭いながらもソ連時代からオーソドックス・サークルの掟でしたので、イワノフ兄弟がこんなに凄いのは不思議でもなんでもないの。さあ、バイヤーさんも購買者の皆さんも安心してロシア・グレイト3ブラザーズを日本に広めましょう! ![]() Landy Star LS-017-2000 (CD ジャズ) personnel: Dmitry Bril (soprano sax), Alexandre Bril (tenor sax), Alexey Bakker (keyborads), Sergey Hutas (bass), Dmitry Sevastjanov (drums) + special guests : Igor Bril (piano on 4~7) 2000年発売 tracks: (1) Before the Sunset (2) Immersion 1 (3) Immersion 2 (4) Semblence (5) Intro (6) Time Remembered (7) Dance of the Seagulls (8) The Endless Road (9) Jungle もう1組のジャズ兄弟が、このアレクサンドルとドミトリーのブリーリ兄弟(双生児)。彼らが初々しい少年時代の1992年にロシアのジャズ祭でステージを見て、私は衝撃を受けた。2人ともコルトレーン,ショーター、リーブマン、グロスマンを見事に踏襲している。それもそのはず、2人の父はロシアのモダンジャズのパイオニアの1人として名高いイーゴリ・ブリーリ(ピアノ)の愛息、サラブレッドだ。あれから10年近く経て録音されたこのアルバムでは表現のスケールが大きくなり深みも増していることが明確にわかる。情感あふれる素敵な曲も書けるぜ。メンバーは将来のロシアを背負って立つであろう優れた若者たち。キース・ジャレットやビル・エヴァンスの曲もやっている。 ![]() Landy Star LS-030-01 (CD ジャズ) personnel: Yuri Goloubev (bass,piano), Igor Butman (tenor sax), Vitaly Golovnev (trumpet, flugelhorn), Arkady Shillkloper (French horn), Igor Boiko (guitar), Elisabeta Lidova (harp) Andrey Kondakov (piano), Edward Zizak (drums), Dmitry Vlasenko (drums), 2001年録音 tracks:(1) Toremar Island (2) Vienna Waltz (3) Chez Moulin (4) Cat's Blues (5) Lullaby (6) A Guitar Song (7) The Path (8) Back & Forth (9) Untold Apology (10) Farewell このCDは可哀想。某店では捨て値で、それでもどっさり売れ残っているのです。この演奏内容を知っている人なら嘆かわしくて哀れで、引きこもりになるでしょうね。リーダーのユーリ・ゴロウベフの存在は私もこのCDで初めて知ったのですが、パーソネルを一望すると、ロシアのトップ・サックスのイーゴリ・ブートマン、天才フレンチホルン奏者のアルカージー・シルクロペル、若手屈指のピアニストのアンドレイ・コンダコフが参加。即買い。これで駄作なら私はロシア・ジャズ聴くの止める!案の定、これもメロディ、アレンジ、アドリブともに良質。内容はジャズ用語で「新主流派」系。買って損したと感じたら私買取り考えます。トランペッターも秀逸。アルバムあったら飛びつきます。 ![]() Solyd SLR 0140 (CD ジャズ&クラシック) personnel: Vyacheslav Gayvoronsky (trumpet), Evelyne Petrova (accordeon), Ariadna Kariagin (vocal), Ernest Ovelian (flute), Grygory Voskoboinikov (bass), 1999年録音 tracks: J.S.Bach / Franzosische Ouverture (partita) : (1) Ouverture (2) Courante (3) Gavotte 1 (4) Gavotte 2 (5) Gavotte 1 dacapo (6) passpied 1 (7) Passpied 2 (8) Passpied 1 dacapo (9) Saraband (10) Bourree 1 (11) Bourre 2 (12) Bourree 1 dacapo (13) Gigue (14) Echo C.Bottegari : (15) O cchi miei che vedeste (16) Non vegg'al mondo cosa (17) Monicella mi farei J.S. Bach : (18) Choral Prelude ; Allein Gott in der Hoh sei her 2001年夏、現代ロシアの誇るジャズ・トランペッター、ヴャチェスラフ(スラヴァ)・ガイヴォロンスキーが、教え子のエヴェリン・ペトローワ(アコーディオン)を連れて初来日した。ライヴでは2人の当時のツアー・レパートリー『Homeless Songs』を披露し、ソ連時代に根を断ち切られたスラヴの古い俗謡を現代に蘇らせて、深い感動をもたらしてくれたのが懐かしい。このCDは彼が音楽研究室で試みたJ.S.バッハ他のバロック音楽の解釈を教え子のうちの精鋭(ペトローワも含む)とともに録音したもの。ソプラノ歌手が全曲歌う。過去のどんな人の演奏からも聴こえてこなかった諧謔的な響きが痛快だ。これぞ真にバロック精神に立ち返った正統的な解釈というべきなのだろうか。 ![]() ![]() 『Korossy Music 1』Savannah/ノーマ WOLP2509(10 inch LP ジャズ) 『Korossy Music 2』Savannah/ノーマ WOLP2510(10 inch LP ジャズ) personnel: 1, 2共: Janos Korossy(piano), Duka Norbert (bass), Lakatos Geza(drums), 1960年代初期録音 tracks: 1: side A-(1) Keserces (2) Eskimo Gerek (3) Orvendezes (4) I'm In Tte Mood for Love , side B-(1) Az Ocean Serelmese (2) Almok (3) Monolog-1 (4) A Tenger-1 A-1, 3, B-2はトリオ演奏、他はソロ・ピアノ演奏 2: side A-(1) Lanok (2) Vnnepely (3) Leanykeres (4) Zongorazom, side B-(1) Vagodas (2) Monolog -2 (3) Second Etude (4) A Tenger-2 A-1, 3はトリオ演奏、他はソロ・ピアノ演奏 ヤンチィ・ケロッシー(1926年ルーマニア生まれ)は、東欧ジャズ史に燦然と輝く一等星である。録音物は少ないが、どれか1枚でも聴けばすぐ分かるように、ジャズの古典的ピアノ・スタイルからモダのアプローチまで幅広く体得し、優れた技巧の持ち主である。ブカレスト放送のピアニスト兼作編曲家、国営エレクトレコード社の音楽的リーダーをつとめるなどして活躍したが、69年ドイツへ出国し、翌70年にUSAのアトランタへ移った。今年ヨーロッパに戻っている。 ノーマさんの執念の賜物である65~68年の録音を入れたCD『Korossy』には本当に感激させられたものだ。創意とロマンの両立、アーティスティックな洗練と明解さの兼備を実現しているのがケロッシー・ジャズだ(このへんは、ポーランドのクシシュトフ・コメダに通じると思う)。今回登場した2枚の10インチLPは、まったくの未発表音源とのこと。全曲オリジナルで、内容は『Korossy』に近い。眩しいくらい気品に富んだ演奏や、豊かな抒情美や、深いブルース・フィーリングや、東欧フォーク調の哀愁など、様々な魅力が味わえる。ケロッシーの場合、東欧フォーク調は、さりげなく織り込まれ、ブルース・フィーリングと溶け合ってとりわけ独特の情感を醸し出す。 どれか1曲薦めてくれと言われたら、僕は『2』収録の「Lanyok」を挙げる。これぞケロッシーの音楽の全幅を語ってあまりある演奏だ。鋭い切れ味と弾力性を巧みにコンビネーションしたリズムの快感。何度聴いてもうっとりする。 ![]() Portik Jazz PRJ 01(CD ジャズ) personnel: Yancy Korossy (piano), Nicolas Simion (tenor sax, soprano sax, bass clarinet), 2001年録音 tracks: (1) Blues for Garay (2) You Would'nt Believe (3) The Good Old Man (4) Meditation (5) One for Richard (6) For Oscar (7) Yancy's Tune (8) Hommage a Bela Bartok (9) Autumn Leaves 去年(2001年)、ヤンチィ・ケロッシーが目立って動き出した。ルーマニア出身の後輩で、サックス奏者のニコラス・シミヨンに誘われて欧州ツアーを行って成功を収め、話題になったのが大きい。このディスクはそのツアーの際に郷里クルージで行ったライヴの記録。腕前健在だ。自作やシミヨン作のジャズ曲を主体に、フォーク曲、クラシカルな曲も交えたレパートリー構成。ニコラスは暖かい音色とまろやかでメロディスなアドリブで大先輩と語り合う。ケロッシーはこの後、ハンガリーに移り、さらに秋にドイツへ移って、ニコラスとのコンビの結束を固めた。2人の情報はホームページでチェックできるのでぜひ訪ねてみてください。なお、このデュオは2003年の来日を目指している。 ![]() Milan 7432179048-2 (CD サウンドトラック) personnel: Folk group of Borodinski (vocals,choir), Valeri Siomine (accordeon), Vladimir Chekasin (compisitions, 1, 8, 25) 2000年発売 tracks: (1) Valse Sifflee (2) Vinavatania (3) La Route de la Ceriseraie (4) Chez ma Mere(5) La Fille aux Yeux Noirs (6) Le Samendi (7) Peines d'Amor (8) Tango Slave (9) Astancia (10) La Noce Noire (11) Le Corbeau (12) Douna (13) La Jolie Fille a la Riviere / etc.(all 25 tracks) ロシアの婚礼を題材にした仏映画『結婚』のサウンドトラック。2000年度カンヌ映画祭でキャスティング部門で受賞したそうですが未見なので内容は紹介できません。この音楽はロシアの歌に関心のある人をたっぷり満足させてくれるはずです。掛け声を発しながら踊る祝い歌、対ドイツ戦時代の愛国歌、民謡他が次々とバヤン(アコーディオン)1台の伴奏で歌われ、老若男女が入り乱れて祝う光景の一部になったような気分に浸ることでしょう。アットホームな歌声がステキです。メイン・テーマのワルツ曲(1)、タンゴ曲(8)他、全3曲をソ連時代からのジャズ界の大物ウラジーミル・チェカシンが担当。メランコリーと抒情をこね合わせて発酵させたらこのような香しい味が出るのかしら。 Sergey Kuryohin on Solyd ほんとスゴイよ! 1. Spectre of Communism (Solyd SLR 0281) 2. Dovekot (Solyd SLR 0279) 3. Live in Liverpool (Solyd Records SLR 0265) 4. Polynesia (Solyd Records SLR 0267) 5. Italy (Solyd Records SLR 0270) 2枚組 6. France (Solyd Records SLR 0273) 7. Don Carlos (Solyd Records SLR 0275) 8. Rich's Opera (Solyd Records SLR 0277) ロシアのレコード会社「ソリド(Solyd)」が、スゴイことをやってくれてます。故セルゲイ・クリョーヒン(1954~96年)の未発売音源、埋もれたLPのリイシュー他を、美麗パッケージ、貴重写真満載別冊ブックレット付きで、すでに上記の8作を出しました。セルゲイ・クリョーヒンは、恐るべき高度なテクニックをもったピアニストであり、奇想天外なグループ「ポップ・メハニハ」(Popular Mechanicsの意味)を率い、映画に作曲家として関わるだけでなく出演も何度もした人でした。そんな大きな才能の喪失の痛みをソリドは再認識させずにおきません。今後も新規タイトルの発売を期待しながら、これまでの8作を振り返ります。 ![]() クリョーヒン本人の弁では、「ポップ・メハニカ」とは、ポップ・ミュージックが大衆的インパクトをもたらす要素を追究した結果導き出した(心理学、精神病理学、神経・脳の生理学も研究したそうですよ)、思考回路を一気に駆け巡り言語や計算をあまり介さず情緒に働きかけるメソッドに、ジャズの即興演奏の醍醐味を加味した実践機関とのことです。予定調和かなと思わせながら、突如出現する「破」のシークエンスを繰り出すことによって、トリップ効果、トランス効果を及ぼすグループなのです。 この演奏では、ロシアのカリスマ的ロック・グループ「キノー」のリーダー、ヴィクトール・ツォイ(この人も早世)等も参加。録音状態はややオフですが、無修正なので、ソ連末期の生々しい息吹きに興奮を禁じ得ません。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 「オペラ」だそうだけど、歌手が出てこない。そのかわり、しばしば合唱や人声のような音がサンプリングされているんです。音はゴキゲンな位にいじられている。それと、クリョーヒン自身がときどき例の裏声でさえずっていますよ。人間語の歌詞はゼロみたい。これで思い出すのが、次に紹介する『金満家オペラ』でも出てくる名歌手オルガ・コンディナの歌。彼女の歌っているのは雀語なんだと、クリョーヒンは涼しい顔で語ったものです。マリーナ・カプーラというロシアの若手屈指の女性フォーク歌手も起用し、雀語によるオラトリオとしてまとめたのが『雀オラトリオ』というCD。ともかく、ポップ・メハニカのステージでは山羊とかアヒルとか牛とかにまで出て貰った人だから、人間語歌詞がないとか雀語なんてのは序の口でしょう。 ![]() (以上) ▲
by jazzbratblog
| 2018-09-17 13:38
| Jazz Brat(マガジン)抄録
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