カテゴリ
全体 アレクセイ・アイギ情報(Rus) セルゲイ・レートフ メロディヤ盤探訪 ピアノ・トリオ (Rus) 管入りコンボ (Rus) クルグロフ(Rus) ガイヴォロンスキー(Rus) スドニック(Rus) バタゴフ(Rus) ヴォーカル物(Rus) Post Kuryokhin Std. ブートマン ソ連ジャズ史関連 ロシアから移住 カフカース出身者 宝示戸&モツクーナス ブルガリア関係 ウラジーミル・レジツキー チェコ関係 ルーマニア関係 ハンガリー関係 ブリリアント ポーランド関係 旧ユーゴスラヴィア 黒い袋をさげる人々の四季 イベント告知 ウクライナのジャズ なんとなく Book / 本 ツアー日誌/添乗員T セルゲイ・クリョーヒン ミーシャ・アルペリン ライヴ報 はじめに Jazz Brat(マガジン)抄録 リトアニアからの風 アレクセイ・クルグロフ 未分類 以前の記事
2024年 03月 2023年 09月 2023年 03月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 04月 2020年 02月 2019年 11月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 04月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 04月 2017年 12月 2017年 10月 2017年 07月 2017年 05月 2017年 03月 2016年 12月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 04月 2014年 12月 2014年 08月 2014年 05月 2014年 04月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 07月 2013年 05月 2013年 04月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
メロディヤ探訪 【27】 67年度のモスクワ・ジャズ祭の実況録音盤は3枚に収録されて発売された。 すでに2枚目について書き留めたが、遅ればせながら、1枚目と3枚目をここに記すことにする。 『ジャズ67:モスクワ若人ジャズ・アンサンブル①』(33C01885-86) まず1枚目である。この盤には何度か驚かされた。ソ連ジャズの新傾向がいくつか聴かれたからである。 かなり重量級のジャズで幕が開く。アレクセイ・ズボフ(Alexey Zubov, tenor & soprano sax)、コンスタンティン・バホルディン(Konstantin Baholdin, trombone)、ボリス・フルムキン(Boris Frumkin, piano)らによるクインテット<クレッセンド>である。これは、この年の盤②に収録されているヴァディム・リュドヴィコフスキーのモスクワ・放送オーケストラの中枢メンバーである。このオーケストラの面々や、ユーリー・サウルスキーのVIAのメンバー(イーゴリ・ブリーリ他)、および、ヴァディム・サクニのグループ、アレクセイ・コズロフのグループというようなジャズ・カフェの常連達が、当時のトップ・ジャズ・ミュージシャンだったと言えるだろう。 クレッセンドの演目は「アゼルバイジャンのムガーム<チャルギャフ>の主題に基づくヴァイエーション」(ズボフ作編曲)である。ムガームは、イスラム古典音楽の核心である旋法のことで、チャルギャフはその中の1つである。ムガームをジャズに活用した先駆者として、バクー出身のヴァギフ・ムスタファザデが名高い。モスクワのような中央のジャズシーンでもムガームに関心がもたれていたとは興味深い。なんとピアノのフルムキンは、まさしくムガームという演奏のあとファンキー・ジャズへと変容させるのには驚いた、ヴァギフ自身ははそこまではしなかった。ズボフもバホルディンも自由にインプロヴィゼーションを繰り広げている様子だ。ズボフはムガームということに限定しないで、カフカース調、さらにバルカン調、スパニッシュ調へと連想を広げているように聴こえるときがある。しかも、ズボフはジョン・コルトレーンばりのフリージャズへと飛びたちたい欲求を示すような、激しいブロウへ傾きかけることがしばしばある。 この年、ズボフはほぼ同じ顔ぶれのクインテット編成によるRTクインテット名でチェコスロヴァキアで開催された第4回プラハ国際ジャズ祭67に出演し、ロシア民謡調の曲でかなりアグレッシヴな演奏をしている。実はそのとき、チャールス・ロイド・カルテットも同ジャズ祭に出演していた。 さて、2曲目は、以前ボッサ調の演奏が収録されたことのある、ウラジーミル・クゥーリ(Vladimir Kulli, piano)が率いるカルテット(flute, p, b, dr)による「2度目の決定」(クゥーリ作曲)。パストラル調のテンダーな演奏である。 3曲目は、オレグ・ルンドストレム・オーケストラが登場し刺激的な演奏を繰り広げる。曲は「闇の中の閃光」(クンスマン作曲)。チャールズ・ミンガス風のダウン・トゥ・アースな管の合奏から飛び出すアルト・ソロは明らかにオーネット・コールマン、エリック・ドルフィーの双方の薫陶を受けたと思われる演奏で、ゲンナジー・ゴリシテインよりもさらにアブストラクトだ。奏者はレニングラード出身のローマン・クンスマン(Roman Kunsman, alto sax)で、ゴリシテインともどもレニングラードで最もできるサックスとして知られている人物であった。サン・ラーのオーケストラでアーシャル・アレンがソロをとっているところか?と錯覚するかもしれない。続くトロンボーンもスリリングだ。さらに興味深いのが、短いがニコライ・カプースティン(Nikolai Kapustin)のピアノのソロである。これ以前のメロディヤ盤でこれだけフリーなピアノ演奏は聴いたことがない。セロニアス・モンク+セシル・テイラーである。なんと4分少々で絞られているのがうらめしい。もったいない! その次のミハイル・クゥーリ(Mikhail Kulli, piano)の「ピーク時」(ツァレフ作曲)がエリントン楽団の「Cジャム・ブルース」をいただいたどうってことない演奏だけに、なおさらもったいない気が募ってしまう。 さて、B面は、ジャズカフェ界隈の人気グループ、ヴァディム・サクニ(Vadim Sakuni, piano)率いるKMカルテットによる、「モーション」(サクニ作曲)。ヴァレーリー・ポノマリョーフ(Valeri Ponomarev)、イーゴリ・ヴィソツキー(Igor Visotsky)の2管がフロントである。ポノマリョーフはクリフォード・ブラウン、リー・モーガンの研究途中というところと言ってしまえば、ヴィソツキーはビーバップからハードバップへシフト中のソニー・ロリンズというところということんあるだろうか。はホレス・シルヴァーの影武者かもしれない……などというのは厳しすぎるかも知れない。具体的なお手本に似れば似るほど、点は辛くなってしまうもんですよね!? 次は、ゲオルギー・ガラニャン(Georgy Ganaian, alto sax)のカルテットによる、「プレシーヴォ湖の夜」(グローミン作曲)。ミステリアスなムードをキープするニコライ・グローミン(Nikolai Gromin)のギターに乗って、ガラニャンのアルトがメロディアスなフレーズを決して切らさない。かなりの聴かせ上手という感がある。グローミンのギターも味がある。 最後はアレクサンドル・ウスーシキン(Alexandre Usushikin, clarinet)が率いるレニングラード・ディキシーランドによる、「ロシアの踊り」(カロレフ作曲)。トランペットによる哀愁のメロディがひとしきり心に染みた後、弾けて、ハッピーなコレクティヴ・インプロヴィゼーションが始まり、リーダーのクラを皮切りにソロがリレーされる。管楽器奏者たちは皆上手い。 『ジャズ67:モスクワ若人ジャズ・アンサンブル③』(33C 020987-8) 67年の3枚目である。本盤のジャケは入手できず、盤しかないのでメンバーについては詳細が分からない。メロディヤ社のディスコグラフィーが英国から出版されたという話をきいたことがあるので、入手したいが、ままならないでいる。 A面は常連出演者のアレクセイ・コズロフ(Alexey Kozlov, alto sax)のカルテットによる「ブラック・アンド・ブルー」(コズロフ、ブリーリ作曲)で幕が上がる。ブルースの枠内で、モーダルかつセロニアス・モンクをかなり指揮した曲に感じられる。ミディアムテンポでコズロフは飄々とユーモラスに吹き綴る。短いドラムソロを挟んで始まったピアニストのソロが冴えている。調性を希薄化し、トーン・クラスターといってもいいような音塊までぶつけるが、軽妙なノリを保っており、いわばアブストラクト・スイングである。もしかしたら、日常的には、かなりフリーな演奏をしているのではないかということを想像させる。 2曲目は、ヴィタリー・クレイノート(Vitaly Kleinot, tenor sax)とアンドレイ・トヴマシヤン(Andrei Tomasian, trumpet)が組んだクインテットによるバラード演奏の、「アリョーニシュカ物語」(クレイノート作曲)。月並みな感想だが、ロシアにクリフォード・ブラウンがよみがえったか、と言いたくなる人は多いだろう。テナーのクレイノートの短いがリリカルなソロも印象に残る。 続いて、レニングラードのG・ザルヒ(G. Zarchi)が率いるヴォーカル&インストゥルメンタル・ジャズ・アンサンブルによる2曲、「道化者」(シャンパル作曲)と「モスクワ巡り」(ペトロフ作曲)。男女混声(3×3くらい?)とピアノ・トリオという編成のグループである。ハーモニーがけっこう磨かれている。 B面はヴラディスラフ・グラチェフ(Vladislav Grachev, trumpet)が率いるディキシーランド・ジャズ・グループによる「古い家」(Y.ムトゥリ作曲)。リーダーがなかなか歌心豊か。クラリネット奏者のヴィブラートが発展途上のシドニー・ベシェという感じで微笑ましい。 2曲目はお馴染みの名手アレクセイ・クズネツォフ(Alexei Kuznetsov, guitar)のトリオによる、「ぜんまい仕掛けのオモチャ」(クズネツォフ作曲)。可愛いけどちょっとヨチヨチ歩きかどうかわからないが、仕掛けで動くオモチャの動きを模しながら(?)、メロディ、リズムにひねりを加えながらも、実になめならかなスイング感で通すところが粋である。クズネツォフは良いインプロヴァイザーだと思う。 最後の曲は、ヴァディム・リュドヴィコフスキー(Vadim Liudvikovski)が率いるビッグバンド編成のコンサート・ヴァラエティ・オーケストラによる「オーケストラのための3楽章のディヴェルティメント」(ガラニャン作曲)。リュドヴィコフスキーは、スターリン後のジャズ・リヴァイヴァル期の最も秀逸なアレンジャーとして記憶されている人物であり、かつてユーリー・サウルスキー(67年②参照)と組んで活躍した。1966年にコンサート・ヴァラエティ・オーケストラの技術監督に就任したばかりである。このオケはモスクワの放送用オケで、いわばエリート集団であり、若きジャズの精鋭たちが結集していた。これまで何度か紹介したゲオルギー・ガラニャン(alto sax)、アレクセイ・ズボフ(tenor sax)、ボリス・フルムキン(piano)、コンスタンティン・バホルディン(trombone)などであるから、ここでも彼らのソロが聴ける。ガラニャン作のこの曲は、スタン・ケントン楽団顔負けのプログレッシヴなシンフォニックなジャズで始まり、手の込んだ精緻な編曲がきびきびと推進されるなかに、短いソロが現れる。その後、エリントン楽団をリスペクトするようなサウンドにシフトするが、さらにバップ・オケーストラの様相に転じる。そして最後はジャズ・ロック調ではあるが、ポリフォニックなソロがうねりけっこう渾沌として終わる。もっとフリーに突入したいが、ぐっとこらえているような節もある。とにかく盛り沢山な趣向のアレンジである。
by jazzbratblog
| 2011-10-17 00:43
| メロディヤ盤探訪
|
ファン申請 |
||