原田依幸(ピアノ)&セルゲイ・レートフ(ソプラノサックス、フルート他)
Letov & Harada duo 2010年8月1日@なってるハウス
モスクワのマルチリード楽器奏者セルゲイ・レートフが2年ぶりに来日し「KAIBUTSU LIVES!」他に迎えられた。中でも個人的には原田依幸(ピアノ)とのデュオは絶対聴き逃せなかった。ピアノと2人というとセルゲイ・クリョーヒンの『ポリネシア:歴史概論』の第2部「文化概論」を私は思い浮かべてしまった。マルチスタイル錯綜状態をつくり出し、ありきたりの展開や解決を拒否して共演相手をゆさぶった怪人クリョーヒンをインスパイアーしたレートフ。相手は日本の即興ピアノ界のカイブツだ。まずは原田の即興をよく聴くレートフ。原田のピアノから生まれ出る眩しい音群をとらえ、レートフはメロディ的な展開を試み原田へ返すという場面がしばらく続く。原田も実はレートフをよく聴いていた。やがて原田のピアノからも香しいメロディが聴かれるようになり、なんと2人のリリカルな「会話」さえ生まれたのには感激した。レートフは抽き出しの多いアーティストだ。今度は日本のミュージシャンとのコンセプチュアルな共演というのもかぶりつきで聴いてみたい。
(インターネットサイトJAZZ TOKYOの企画「2010年のライヴ」用に書いたが未掲載となった)