|
カテゴリ
全体
アレクセイ・アイギ情報(Rus) セルゲイ・レートフ メロディヤ盤探訪 ピアノ・トリオ (Rus) 管入りコンボ (Rus) クルグロフ(Rus) ガイヴォロンスキー(Rus) スドニック(Rus) バタゴフ(Rus) ヴォーカル物(Rus) Post Kuryokhin Studi ソ連ジャズ史関連 ロシアから移住 カフカース出身者 宝示戸&モツクーナス ブルガリア関係 チェコ関係 ルーマニア関係 ハンガリー関係 ポーランド関係 イベント告知 ツアー日誌/添乗員T ライヴ報 はじめに 未分類 以前の記事
2012年 05月
2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 お気に入りブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
おすすめキーワード(PR)
ブログパーツ
最新の記事
ファン
|
5月19日(土)に行われた公開研究会「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ 2012 no.2」(@カフェズミ)の内容の記録です。ご列席くださった皆様ありがとうございました。 第一部:モスクワ報告2012 まず鈴木正美氏より、今年最初の現地リサーチ(3月)の際に収録した映像(動画・写真)を写しながらのモスクワ最新動向の報告。 ソ連時代に公衆浴場だった場所が今、モスクワで最もホットなエンターテインメント&カルチャー・スポットの集合ビルとしてよみがえっているというのは、ダジャレなんかでもなく、真実だ。そんな中にある店「マスチェルスカヤ」はライヴ音楽好きにおすすめしたい新名所と言える。ここで行われたキエフ(ウクライナ)のフォーク・グループ「ダハブラハ」のフレッシュなアレンジの曲で幕開け。トラッド・フォーク曲が主要レパートリーとのことだけど、アレンジが新鮮で生気のある演奏が心地いい。大入り満員。次いで、数日後に同所に出演したチェコのミコワシュ・ハジマ(サックス)によるジャズ。これはモスクワの前衛音楽の重鎮セルゲイ・レートフ(サックス)との共演(ちなみに鈴木氏はこのセッションにゲスト参加)。出演者はかなり多彩な様子とのこと。 モスクワのライヴをチェックするなら絶対外せないのが「ドム」。ここで目撃したのはアルメニアのドゥドゥク奏者(カヴァル持替え)をリーダーとするグループ「アルギシトゥイ」。ドムも出演者の幅広さには定評がある。ニュージャズ、エクスペリメンタル、ミニマル、トラッド、宗教音楽他、行けば収穫あり、という名所。ドムの創設者といえば故ニコライ・ドミートリエフ。ニコライは「Long Arms」という名のレコード会社も創立してたことはすでにおなじみと思う。現在、ドムもLong Armsも、夫人リューダさんが切り盛りしている。いつかニコライの人と業績をまとめたいという鈴木氏は今回、ドミートリエフ家を訪問し、写真撮影とリューダさんへのインタビューを試みた。いずれまとめて発表してくれることだろう。 今一番モスクワで注目されている作曲家といえば、ウラジーミル・マルトゥイノフだろう。フォークロアの性格とリチュアルなムードが合わさった新作「カワウソの子供達」がチャイコフスキー記念コンサートホールでモスクワ初演されたのを逃しはしない。出演はヴァイオリンのタチアナ・グリンデンカ率いるOpus Posth Ensemble、トゥヴァのHuun Huur Tu、および合唱団、そしてマルトゥイノフ自身(ピアノ)。「ガリツィアの夜」に通じるヴォーカルが聴ける刺激的な作品だ。この曲のウラルのペルミでの初演時のステージを収録したDVDを、ゾクゾクしながら鑑賞した。 あっという間に2時間程が過ぎた。 第二部:新譜CDダイジェスト 少しだけ休憩を挟んで、鈴木氏とわたし岡島が対談式でロシアの新譜CDからいくつかレビューした。 まず、マルチ・サックス奏者アレクセイ・クルグロフだ。この2年間、彼の新譜がモスクワのSolyd社とイギリスのLeo社から競うように出てくるので嬉しいのなんの。ほとんどはこのブログで紹介済みだけど、実際の音で確かめてもらいたくて2曲用意した。考えてみたら、今までクルグルロフの経歴についてあまり触れていなかったので、ちょっと紹介しておこう。 アレクセイ・クルグロフは1979年モスクワ生まれ、33歳。父はジャズ・ピアニストのウラジーミル。小さいときからピアノを勉強し、ちょっと大きくなってから管楽器に手を出した。セルゲイ・ザルノフスキーの「Class Center」に通った間にジャズをみっちり勉強したそうだ。最初のジャズの先生はエルネスト・バラシヴィリという名で、なんとこの人はレオニード・ウチョーソフのオーケストラのソリストだったそう。Class Centerではアルカージー・シルクロペル(ミーシャ・アルペリンとの共演でもおなじみのフレンチホルンの名手)の「自由な即興」というテーマの授業を受けて、さらに進路が定まっていった様子だ。その後グネーシン音大のジャズ&ポピュラー音楽科に進み、在学中にジャズ関係の受賞歴多数。2003年卒業。自己の名前にちなんだグループ「円形カルテット」結成。セルゲイ・クリョーヒンの多ジャンル錯綜マルチメディア無礼講スペクタクル・プロジェクト「ポップメハンカ」や、ウラジーミル・チェカシンの多スタイル折衷かつセンチメンタル・ドラマチック&シアターピース感覚のカルテットなどにインスパイされたという。だからポストクリョーヒン・スタディーズにはうってつけの逸材なのである。クルグロフは詩、映像も交えたり、シアター的な演出もある程度しているが、スペクタクルと言う点では大先輩2人ほどには手を広げていない。そもそも、先輩をそっくり真似る必要もない。ロシアジャズの人間国宝的なゲルマン・ルキャーノフとかウラジーミル・タラソフなどとの共演が多いようなので、人脈を増強していつかは彼なりのどでかいことをやってくれそうな期待が持てる逸材と考えている。サックスの腕前にも要注目だ。曲、シチエーションによってはつややか音色のアルトでフィル・ウッズもマッサオなのでは?というようなプレイもするし、ジョン・コルトレーンの後期のような奏法もどんどん取り混ぜるし、4本同時吹きでラサーンもドッキリか?というなこともやってのける。アルバート・アイラーに捧げたインプロをするかと思えば、ウラジーミル・レジツキーにもトリビュートした。濃密なロマンチシズムで塗り込めたバラードも作る。 などなどと説明したところで紹介したのは2曲。 ①『In Tempo』より「Intermedia for Basset horn #1」:Alexey Kruglov (reeds) Vladimir Tarasov (drums, percussion) Solydの2枚目から。タラソフの繊細きわまりない音の響かせ方にクルグロフは見事に調和している。クルグロフはノド声を微妙に混ぜたりする。かなり技は多彩で細かい。 ②『Russian Metaphor』より「Russian Metaphor」:Alexey Kruglov (reeds) Oleg Udanov (drums) Igor Ivanushkin(bass) 去年出たLeo盤から。導入部のフォーク・フルートが奏でるようなメロディアは、ロシアの音楽が好きな人にはどこか懐かしく感じられるだろうと思う。民謡とか誰かのシンフォニーにも混じっているような…。クルグロフはロシア的でありたいとわざわざどこかで述べていた。それも、詩を交えるとすればプーシキンのような古典だけではなく、ヴィクトール・ツォイの詩や、臆せず自分の詩も読む。引用するなら伝統的な民謡だけなく、ソヴィエト時代のヒットソングをよぎらせたりもする、という意味においてだ。この『Russian Metaphor』では北方ロシアへ思いを馳せたという。共演している打楽器奏者オレグ・ユダーノフは、北ロシアにあって前衛ジャズとフォークジャズを自家薬籠中のものにした、故ウラジーミル・レジツキー(サックス奏者)が率いていた「ジャズ・グループ・アルハンゲリスク」のメンバーだった人物である。 哀愁味が濃いロシア・フォーク調のバラード演奏もクルグロフは得意だ。試しに『Seal of Time』(Leo)の中の「Poet」を聴いてみてほしい。とびきり切ない美旋律、やけにドマティックな表情付け、激烈な高揚、極端な屈折でバカうけのウラジーミル・チェカシンのオハコ「思い出」を思い出さずにはいられないでしょうね。なにかにつけてtoo much、はみだしまくりの盛り合わせ感覚で楽しませてくれるチェカシンを愛する人にはクルグロフも受けるはず。 次に、先述のニコライ・ドミートリエフが創業したLong Armsの2011〜12年度リリースから抜粋して紹介した。まずサックス、ベース、ドラムス(ドラムスは女性)という編成で、ビシビシ、ブリブリ元気一杯な若手のコンボ「ブロム」。 ③『BROM』より「Tread」:Dmitry Lapshi (bass), Oksana Grigorieva (drums), Anton Ponomarev (alto & baritone saxes) ドミートリー・ウーホフ激賞していわく、「これぞ本物、特上!」、梅津和時さん絶賛していわく、「ワンダフルとてもワイルドでプリミティヴな音楽!」、SXQの松本健一さんも絶賛していわく、「ワンダフル!」(以上、ライナーノーツより引用)。80年代NYダウンタウン系ノーウェーヴ、JZ、デンスバンド、ニッティングファクトリー系フリー、ファンク、ノイズ、大友良英ONJO、そしてオーネット、マシンガン他を愛してやまない若者たちなんだろうなと感じる。 次に、素性はまったくわからないけど、キュートな声と不思議なピアノのダリア・オニシュク。 ④『The Last Songs of Innocence』より「My Seventh dog」: Daria Onishchuk (vocal, piano) 抑え目のボリュームでいろんな音がミックスされている。ピアノのボディを叩いたり弦を触ったりもしている(?)。 次は、私も鈴木氏もかなり注目の1枚。ポクロフスキー・アンサンブル出身のセルゲイ・ジルコフとエレナ・セルゲエヴァのフォーク・グループ「NETE(ニチエ)」の久しぶりの新作。アレクセイ・アイギ4分33秒との共演盤でセンセーショナルな話題となり、New world musicとかavant-folkとか称された、古い民謡をレパートリーの中心にしているデュエットだ。NETE単独名義でLong Armsから発表した『suffering』(2002)を聴いた時は、avant-folkという形容なら受け入れても良いかなという気がした。そこではサックス奏者エドゥアルド・シフコフ、ドラム奏者ミハイル・ユデニッチを迎え、即興演奏を大いに含め、広大なユーラシアを東に西に、北に南に放浪するかのようなアレンジが冴えている。素材を一言で言えばフォークロア、細かく言えば民衆の間に歌い継がれた抒情歌、戯れ歌、リチュアル(婚礼他)、子守歌、巡礼・聖歌他ということになるのだろう。彼らはそうしたマテリアルを、即興演奏を交えてワイルドにエネルギーを放射しながら演奏する時、諸々の感情や思想が吹き溜まり渦巻くようなワイルドなフィーリングをまき散らすところが面白い。そこには猥雑さ諧謔性に満ちた大道芸の類いのフィーリングさえ感じられる。とすると彼らは放浪のスコモローフを意識しているということになるのだろうか。スコモローフは行く先々のフォークロアで情報を伝え、歌い、踊り、説き、戯れる。そこにはきっと結界というか境界的な破綻が生じたような時間がもたらされたことだろう。各地の土着的フォークロアの内奥に秘めて置かれるべきもろもろがスコモローフ的なひっかきまわし、刺激によってどろどろ流れ出てくるような、あるいはパンドラの箱が開いて飛び散るような様を演じているのだ、と私が感じたというだけで、ほんとはどうかわからない。NETEの音楽を聴けば、彼らは各地のフォークロアを現代によみがえらせるというような優等生的な目的で演じているなどととはまったく思えない。 そんなわけだから、10年ぶりのLongs Arms盤『The Two』には期待で胸が膨らんだ。さあ、どうなんだ。 ⑤『The Two』より「Christmas Song」:Sergey Zhirkov (vocal, Vladimir horn, lyre, balalaika, accordion, kursk pipe, kalyuka, gusli, etc), Elena Sergeyeva (vocal, lyre, handbell, harmonica, gusli) ⑥同上より「There, by the rivers of Babylon」 ⑦同上より「Loshcha」 今回は二人だけの演奏だが、セルゲイ・ジルコフは色んな楽器を立派にこなしていて、響きは多彩で、1曲毎に新しい興味をかきたててくれる。時折鈴の音を入れながら歌う「Christmas song」は、数年前鈴木さんに連れられて訪ねたドムで聴いたアンドレイ・コトフがハーディーガーディーを弾きながら歌っていたような巡礼歌の世界であろうし、「Loshcha」ではインドのラーガが意識されているように聴こえる。「There, by the rivers of Babylon」からはバルカンから地中海へ至る風景が思い浮かぶ。セファルディ・トラッドの中に類似の調べをもった曲があったと記憶する。今回は極めて霊的なムードがたちこめていて、巡礼地巡りのロードムーヴィーといったイメージを持ってしまう。もっともっと聞き込んでから改めて記してみたい。 さて、フォーク系といえばアコーディオン弾語りのヴェーラ・サージナがとびりきり異色なので、Long Arms盤ではないが関連で取り上げた。アコ弾き語りのフォーク系と言うと、エヴェン・ペトローヴァを思い浮かべるかもしれないけど、芸風はまったく重ならない。サージナの歌からは、ロシア民謡、ソヴィエト民謡のどちらもまったくイメージできない。人呼んで「ロシアのディアマンダ・ギャラス」、あるいは「サイケデリック・フォーク」とか言われて話題になっていることは確かだ。2年前に鈴木正美氏がレートフのサックスマフィアと共演したあと、同じステージにソロでサージナも出演したと言う。後日、セルゲイ・レートフはサージナと共演し、そのときの模様がYoutubeにアップされているので、興味のあるかたはご覧の程。 ⑧『Into the red rays』より「Into the red rays 」:Vera Sazhina (vocal, accordion) ⑨同上より「Blue fog」:同上 カルト風と言えば言える。ゲテモノではない。私なんかは、80年代のNYダウタウン・ニューミュージック・シーンを思い出し懐かしささえ感じる。 さて、ふたたびLong Arms盤より、ウラジーミル・マルトゥイノフの新譜の話題。マルトゥイノフの作風は多彩で、たとえば、1)「Come in」に代用されるシンプルかつ心安らかな美旋律を繰り返す曲もあれば、2)「Hymni」などに代表されるキリスト教音楽/儀式に立脚した作品、3)「Night in Galicia」に代表される独創的なヴォーカルとチェンバー・アンサンブルによるシアター的なリチュアル作品、4)「Dances on the shore」に代表されるピアノ独奏による長尺かつ緻密なミニマル作品などがお馴染みであろう。今度CDになった『Wall-message』は4の系統に属する。昨年春に鈴木氏が長期モスクワ・リサーチの際にそのライヴを収録して、帰国後に当スタディーズで紹介してくれた時には誠に衝撃を受けたものだった。40分前後マルトゥイノフ自身がノンストップで弾き切る。同時に、不思議な画面が流れる。画面に映し出されているのは始め何かわからないが、徐々に微妙に変化し、最後には巨大な壁であることがわかる。音楽はミニマル基調だけど、耳を済ませば微妙に綾なす変化がある。そしてもう一枚出たのが、ヴォーカル(コーラスと独唱)で演じられる『Iliad』である。テキストはホメロスである。やや3系統に近いが楽器は打楽器の他にはほとんど使われない。ヴォーカルの部分は上記の「カワウソの子供達」と通じている。どちらの作品でもキリスト音楽的な書法は影を潜めてしまっているが、リチュアル性は強く、しかもいわば異教的なイメージが強い。 ⑩『Iliad』より「A OO YA…」:Svetlana Anistratova, Anna Bukatina, Elena Gavrilova, Ekaterina Serebrinskaya, Mikhail Stepanich (vocal solists), choir ; leader of the project=Tatiana Grindenko ⑪同上より「And sleeps Achilles ? I」 なんと刺激に満ちたヴォーカル・アルバムだろう。マルトゥイノフとリューダ・ドミートリエフさんは親しいし、鈴木氏はマルトゥイノフと面識があるしリューダさんとも親しい。他の諸外国に先駆けて、これを日本で公演という可能性を探るのは決して無謀ではないと私は思う。有志の結束があればなんとかなるのではないだろうか。 さて、米国の著名な弦楽カルテットであるクロノス・カルテットがマルトゥイノフに委嘱して生まれた曲がある。クロノスはその「The Beatitudes」を含めてマルトゥイノフ作品集『Music of Vladimir Martynov』(Nonesuch)から発表した。「The Beatitudes」は「Come in」系統の美旋律曲である。 ⑫Kronos Quartet『Music of Vladimir Martynov』より「The Beatitude」。曲名はマタイ伝の中の「山上の垂訓」のこと。他に2曲収録。 このクロノスQのNonesuch盤では「カワウソの子供達」「Iliad」と全く異なる世界が繰り広げられている。だからマルトゥイノフの次のヴォーカル作品がどんなものになるか、興味津々だ。 この新譜CDコーナーは、サンクトペテルブルクのニック・スードニク(original noise instruments)の新作『天才の妄想の保管所』の1曲「超軽量成分」で締めた。ニック・スードニクは、世界的にも有名なノイズ・ユニット「ZGA」のリーダーである。ZGAは1984年にリガで結成されたが、1991年にPushkinskaya 10 Art Centerのすすめでペテルブルク移住し、以来当地で独特の音響をクリエイトしてきた。Pushkinskaya 10 Art Centerは、いわゆるアヴァンギャルド・アートの殿堂である。しかしギャラリーの機能に止まらず、エクスペリメンタルな映像や音楽の場としても著名である。スードニクは今もこのスペースとの強い絆で結ばれている様子だ。新作もここで制作されている。 ⑬『Depot of Genius Delusions』より「Ultralight Elements」:Nick Soudnick (seifmade instruments) またモスクワへも行きたいけど、この音を聴いたらサンクトへも行きたくてうずうずしてきた。 以上、簡単ながら5月19日の記録でした。 なお、①から⑬までの曲は、カフェズミ(吉祥寺)さんに行けば聴けるようにしてありますので、ぜひお試し下さい。 ポストクリョーヒン・スタディーズは今後もどんどん開催します。次回は6月下旬、その次は7月上旬の予定で仕込み中です。近くなってきたら、当ブログかカフェズミさんのホームページで御確認ください。
お知らせです。 さきに告知いたしましたイベント「5月19日(土曜日)ポスト・クリョーヒン・スタディーズ2012 no.2:モスクワ最新動向、新譜disc、他」ですが、当日午後から翌20日にかけて、中央線の三鷹〜立川間をご利用の方にご案内です。 また、遅ればせながらプログラムの概要が定まりましたのでお知らします。 1)中央線の件 14:15頃から終電まで三鷹〜立川間で工事のために大幅に乱れますのでご注意ください。折り返し運転、バス代行などが行われるとのことです。JR電話案内窓口は、tel 050-2016-1620。 2)プログラム概要のお知らせ 【Part 1】映像で報告:モスクワ最新動向 3月のモスクワ・ライブ映像 ウラジーミル・マルトゥイノフのDVD『カワウソの子どもたち』より 【Part 2】CD新譜ダイジェスト アレクセイ・クルグロフの新譜 ● album IN TEMPO より(with Tarasov)● album RUSSIAN METAPHORより 若手のフリージャズコンボ「ブロム」● album BROMより 可愛いダリア・オニシュクの特異なリリカルピアノ弾き語り● album THE LAST SONGS OF INNOCENCEより ポクロフスキー出身のデュエットNETE● album THE TWOより フォーク系といえばシャーマニックなアコ弾き語りヴェーラ・サージナ● album INTO THE RED RAYSより ミニマル・ピアノ・ソロの注目株ニキータ・ゼルツェル● Movement vol.1より ウラジーミル・マルトゥイノフの新譜相次ぐ(Long Arms他)● album ILIAD他より サンクトペテルブルクのノイズの詩人(?)ZGAのニック・スードニク● Album DEPT of GENIUS DELUSIONSより ■出演:JAZZBRAT(鈴木正美、岡島豊樹) ■場所:吉祥寺 サウンドカフェ・ズミ ■開演時間: 17:00 ■料金:500円+オーダー 吉祥寺サウンド・カフェ・ズミ 〒180-0005 武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F Tel 0422-72-7822
ポスト・クリョーヒン・スタディーズ2012 no.2:モスクワ最新動向、新譜disc、他 出演:JAZZBRAT(鈴木正美、岡島豊樹) 5月19日(土曜日) 場所:吉祥寺 サウンドカフェ・ズミ(文末に住所・電話) 開演時間: 17:00 料金:500円+オーダー ![]() ロシア音楽界のホットな情報に飢えている皆様、おまちかねの公開研究会「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ」の今年2回目の開催が間近です。 年に何度も現地を訪ねてロシア音楽界の動向を貪欲にリサーチし続ける鈴木正美氏(新潟大学)が、今回も惜しみなく情報を披露してくださいます。3月下旬のモスクワ・リサーチ、日頃深めておられる考察の報告が今回の目玉です。もちろんいつものように映像資料(ドムでのライヴ模様他)、音楽資料を交えながらの報告となります。 あらゆる音楽について造詣が深く、多彩な音楽家コネクションを有していた故クリョーヒンはマルチジャンル、マルチメディアによるスペクタクル(ポップ・メハニカ)を展開し驚嘆させてくれました。そんなクリョーヒンをロシア人以上に理解しているといわれるのが鈴木氏です。今回も多角的にロシアの音楽の現状を解剖してみせてくれることでしょう。 新譜ディスク紹介コーナーでは、「ロシアのディアマンダ・ギャラス」の異名をとる話題のヴェラ・サジーナ(voice, multi-instruments)、フォーク・デュオ「NETE」の久しぶりのアルバム、活きの良い若手フリージャズ・グループ「BROM」、ミニマル・ミュージックの要注目株ニキータ・ゼルツェルのトランスへ誘うピアノ・ソロ、そして新譜の相次ぐマルトゥイノフの諸作から『ガリツィアの夜』の衝撃が再び!と沸騰中の『ILIAD』などなどをご紹介予定です。 乞うご期待! ![]() ![]() サウンドカフェ・ズミ 吉祥寺Sound Cafe dzumiサウンド・カフェ・ズミ 〒180-0005 武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F Tel 0422-72-7822
[宵(酔い)どれ黒海周遊ジャズツアー第3回カフカースのジャズを訪ねて]の記録:その1 ![]() 黒海のウェストコーストのバルカンに面白いジャズが沢山あることは周知の事実ですが、反対のイーストコーストはどうかというと、まだあまり知られていません。そこはカフカース(コーカサス)と呼ばれる地域で、国で言えばグルジア(ジョージア)、アゼルバイジャン、アルメニア、さらにロシアに属するダゲスタン、チェチェンなどの国々からなる一帯もあります。いずこもソ連邦に属していました。だからジャズとは縁遠いんじゃないの?と決めてかかるのは早計です。ソ連解体後この国々の間には、ロシアも絡んで、キナ臭い事件が相次ぎましたが、現在、グルジア、アゼルバイジャン、アルメニアが共同で「カフカズ・ジャズ」という青少年音楽家にスポットを当てるジャズ祭が続いていて(米国大使館の支援で2010年に開始)、そこには3ヵ国の傑出したミュージシャンが出演しています。では昔はどうだったのかと言えば、やはり秀逸なミュージシャンがいろいろ出現しました。スターリン死去(1953)、スターリン批判(1956)ときて、ジャズは水面下からようやく顔を出しました。60年代になるとソ連各地でジャズ祭が行わるようになったことも今ではよく知られるようになりました。 思い返せば、1960年代中盤から制作されるようになったジャズ祭の記録LPシリーズ『モスクワ若人ジャズ』の中に、カフカース出身者だろうなとおぼしき名前を見ることは珍しくありませんでした。特にアゼルバイジャン出身者が多かったと言えます。代表的な存在は、ヴァギフ・ムスタファザデ、ラフィク・ババエフ、ウラジーミル・セルマカシェフでしょう。CD2枚と分厚いブックレットのセット『Jazz in Azerbaijan: Anthology』(Jazz Center Baku)が発売されたことがあります。そこには1940年から2003年までに録音された28曲が収録され、主要な音楽家の紹介文が掲載されています。それを読むと、1930年代からの流れが少しわかってきます。現在、そのCDを制作したバクー・ジャズ・センターが、その名前でインターネットサイトを立ち上げ、同国におけるジャズ文化の発展を期して多彩な記事、動画を含めた充実のコンテンツを発表していますので、CDセットがなくても同国のジャズの様子をうかがうことが出来ます。 アルメニア、グルジアでもジャズ関連のサイトに力が入ってきた様子がうかがわれますが、それでもアゼルバイジャンにはまだ及ばない感は否めません。今後の充実に期待しています。そうとしても、この3ヵ国の中ではイスラム教徒が大多数を占めるアゼルバイジャンでジャズがもっとも盛んな様子であるのはなぜでしょうか。考えられるのは、19世紀から20世紀にかけて石油を巡って、欧米人が流入しコスモポリタン・シティであったことや、旋法にのっとりながら自由に解釈して即興的変奏することが好まれたイスラム古典芸術音楽を根っ子にもっているという特性とも関係があるかもしれません。 さて、出発の時間です。これからカフカースのジャズの歴史的な人物を皆さんにご紹介したいと思っています。 トフィグ・グリエフ:バクーにジャズを広めたパイオニア 1917年バクー生れのトフィグ・グリエフがアゼルバイジャンにおけるジャズのパイオニアということです(2000年死去)。トフィグはバクー音楽院を出た後、1936年に国立モスクワ音楽院へ勉強しに行きます。そのときにジャズと出会っています。ピアニスト兼作編曲家のアレクサンドル・ツファスマンが音楽監督を努めていたソ連国営ジャズ・オーケストラ(あったのです)を聴いたせいです。トフィグは懸命にジャズを勉強し、短期間でツファスマン率いるオーケストラのピアニストとして活躍するようになったというから凄いですね。 ソ連ジャズ史上の輝かしい巨星の一人がツファスマンです。1930年代初期から50年代まで多くの録音が残されました。スイングジャズ期の米国の最先端グループにも引けをとらないアレンジを聞かせるかと思えば、ロシア情緒豊かな哀愁味のある曲調の歌曲の作曲およびそのジャズ・アレンジでも人気を博した人です。トフィグは少年時代からアゼルバイジャンのフォーク音楽や、その背骨にあるイスラム古典音楽のムガーム(マカームの親戚の旋法)に関心が強く、西洋古典音楽を学ぶのと並行してリサーチを進めて出版、録音も手がけたとのことです。 1939年にモスクワから戻ったトフィグは、アゼルバイジャンで初めてとなるジャズ・オーケストラを結成します。その頃の録音が1曲、『Jazz in Azerbaijan: Anthology』に収録されています(「Qaytagi」)。シンフォニック・ジャズの響きを使いこなし、ツファスマンゆずりか親しみやすく哀愁味のあるメロディーを備え、ギターをまるでタールの速弾きのように弾かせ、ギター・コンチェルトの様相も呈した趣向豊かな曲です。ムガームのいくつかの演奏を聴いたことのある人の耳には、ギターのフレーズにムガーム・タッチがいくらか取り入れられていることが感じられることでしょう。 その後、ポピュラー音楽楽団を率いてフォーク音楽を生かした独特の音楽を量産し、多数手がけた映画音楽やヒットソングの中にもフォーク・フレイヴァーを漂わせたとのことです。ジャズ・ピアニストのヴァギフ・ムスタファザデ(1940-79)はそんなトフィグの音楽の薫陶を受けて少年時代を過ごしたことでしょう。後にヴァギフが『トフィグ・グリエフ作曲のテーマに基づくジャズ・コンポジション』(Melodiya)を制作したのもそれゆえと受け取るのが自然と思います。このLPには2種以上のジャケがあると言われています。そのうちの1枚にはグリエフとヴァギフの親しそうな2ショットが写っています。 ![]() 以前ヴァギフについて紹介文を書いたことがあるので繰り返しませんが(■)、一言でいえば、ジャズとムガームを旨く折衷させ、「ムガーム・ジャズ」を確立したと評価されているジャズ・ピアニスト/作曲家です。 上記のグリエフ集には何回もびっくりさせられます。まず、グリエフが生んだ味わい深いバラードの数々、また、それを解釈するヴァギフの豊かな変奏能力、そこに織り込まれたフォーク情緒豊かなデコレーションです。次に、多重録音によって複旋律が絡み合う様の優美さ、鮮やかな色彩感。さらに驚くのが、汎調的、クラスター的な取り組みも見せた曲(「即興曲」)も含まれていることです。2004年に発売なったヴァギフのCD6枚セット(Azerbaijan International AICD 1401)のCD3の中には、このLPアルバム収録曲の他にもトフィグ・グリエフの曲が収録されており、オリエンタルな曲調の女声コーラス・アレンジ曲や、ビッグバンド・アレンジの曲もあり、ヴァギフのピアノとともに聴くことが出来ます。 トフィグ・グリエフはアゼルバイジャン屈指の作曲家となり、ユニオンのお偉いさんともなっていきましたが、ヴァギフは1979年に惜しくも心臓発作で急死してしまいました。 (つづく) ![]()
遅ればせながらアレクセイ・クルグロフ(reeds)のSolyd(ロシア)、Leo(英国)から2011年下半期に出たCDをメモしておこう。 Alexey Kruglov & Vladimir Tarasov『In Tempo』(Solyd SLR 0404) ![]() 巨匠ウラジーミル・タラソフ(drums, percussion)とのデュオの続編。共演1作目『Dialogos』(Solyd SLR 0403)と所も日取りも同じ2010年2月7日モスクワでのスタジオ・セッション。タラソフのまさにインテンポの快速キザミに乗ってクルグロフが歯切れのいい即興ブロウをする短いトラックのタイトルがアルバムの標題にもなっている。なるほど、今回の収録分の性格が多分に出ているのがこのトラックと言える。今回は全般的にインテンポな設定を含んだ曲が多い。タラソフは多彩な「パターン」を去来させてクルグルフを誘っている。たとえば、スイング期に流行ったみたいなブラシワークで挑発(?)されて、さあどう出るクルグロフ。スイング調になるか? なりかけたり、方向を変えたりする様子がそのまま記録されている。クルグロフのホーンは無闇矢鱈と叫ばないし、ひとりだけ遠くへ飛んでいくことがなく、相手の音ときっちり向き合いながらダイアログしている。楽し気な演奏で、実にさわやかな後味だ。 Alexey Kruglov :Krugly Band『Identification』(Leo CD LR 616) ![]() クルグロフのレギュラー・バンド「クルグリー・バンド」による2010年9月のスタジオ録音。ドミートリー・デニソフ(bass)とウラジーミル・ボリソフ(drums)とのトリオで、クルグロフはサックス各種の他にピアノも使っている(音楽学校ではピアノ専攻だった)。メンバー3人の名前のモノグラムの音楽化という実験的な作曲に立脚した音楽が演奏されている。ジャケにうっすら見えるのが各文字に割り当てられた音である。メインテーマはロシア的メロディ作法にのっとっているとのこと。聴き手はクルグロフのそうした音楽から言語を解読する楽しみも込めているという寸法らしい。こうした設定で、縦横に即興演奏されている。クルグロフは複管+ピアノの同時弾きもやって楽しませてくれる。チェカシンを思い出すなあ。ぜひDVDアルバムを出して欲しいものだ。 Alexey Kruglov, Alexey Lapin, Vladimir Shostak『Compositions #37』(Solyd SLR 0413) ![]() サンクトペテルブルクのShades of sound festival(実験音楽ギャラリー:ESG21)でのライヴを収録したCD(2011年5月録音)。地元のアレクセイ・ラピン(piano, prepared piano)、ウラジーミル・ショスタク(bass)とのトリオによるインスタント・コンポジションとのことだが、構成はある? ラピン(内部奏法)とショスタクによるミニマル的な音響の中からクルグロフのアルトサックスが浮び上がる。ラピンが執拗に内部奏法でパルスを放ち続ける様子はなんらかの儀式のようにさえ聴こえる。その後、クルグロフ主導なのかロシア風味がかすかに香るメロディをもとにした会話的なやりとりが続くときにはピアノは通常の奏法になっている。その後、ピアノは内部奏法に戻りパルス的を発しつづけベースが通奏低音的な役割を続けているときクルグロフはサックスにトロンボーンのマウスを装着して不規則な咆哮を繰り返す。その後三者は旋律的に絡み合いながら姿が霞んでゆくというのが1曲目(約35分)。アンコールに応えての約8分の演奏もあり、そちらは三者からみ合うフリーセッション風。 さっき検索したら、Leoからクルグロフの新譜が近々発売とのことだったので楽しみ。
|